ルカ4章・なぜ悪魔の支配が許されているか

「彼は[イエス]を連れて上り,またたく間に人の住む地のすべての王国を見せた。そして悪魔は言った,『この権威すべてとこれらの栄光をあなたに上げましょう。それはわたしに渡されているからです。だれでもわたしの望む者に,わたしはそれを与えるのです。』」(ルカ4:5,6)


 悪魔サタンは人の住む地のすべての王国をイエスに見せて、冒頭の聖句のように言いました。それで、悪魔サタンは人間製の政府の権威すべては自分のものであり、それを自分の望む者に与えることができると言いました。そして、イエスはサタンの言葉を否定されませんでした。それでは、悪魔サタンはなぜそうした権威を持っているのでしょうか。なぜ悪魔サタンの支配が許されているのですか。


 それはエデンの園で悪魔サタンの提起した論争のために、エホバ神は悪魔サタンが人間を勝手に支配することを一時的に許されたからです。


 エデンの園でどんなことが起こったのでしょうか。今からおよそ六千年前にエホバ神はエデンの園にアダムとエバを創造されて置かれました。(創世記2:15)ふたりは何不自由のない、また、問題のない生活を送っていました。エデンの園では食べ物は十分にありました。(創世記2:9)エデンの園は大変快適な気候で、温暖だったので、服を着る必要さえありませんでした。(創世記2:25)ふたりはエデンの園を耕し、動物の世話をするという仕事が与えられていました。(創世記2:15、1:26)ふたりは病気にかかることも、年を取ることもありませんでした。なぜなら、ふたりは神に従っていさえすれば、死ぬことはなかったからです。(創世記2:17)


 ただ、エホバ神はふたりに、神が人間のために定められた善悪の基準を尊重するよう求められました。そのご要求を、エホバ神はアダムとエバに善悪の知識の木の実を食べてはならないと命じることによって示されました。エホバ神は、善悪の知識の木の実を食べるならば死ぬと言われました。(創世記2:17)


 ところが、悪魔サタンは、善悪を人間が判断することについてエバに次のように言いました。「あなた方は決して死ぬようなことはありません。その木から食べる日には,あなた方の目が必ず開け,あなた方が必ず神のようになって善悪を知るようになることを,神は知っているのです。」(創世記3:4,5)
それで悪魔サタンは善悪の知識の木の実から食べるなら、アダムとエバが神のように善悪を知るようになると言いました。悪魔サタンは、人間がエホバ神に従わなくても、善悪の基準を神のように自分で判断でき、人間がそのように行動しても、死ぬことはないと言いました。


 エバは悪魔サタンの言葉に欺かれてその言葉を信じました。(テモテ第一2:14)アダムは悪魔サタンの言葉から惑わされることはありませんでしたが、エバと離れたくなかったのでしょう。アダムとエバはふたりとも、善悪の知識の木の実を食べました。(創世記3:6)


 その時エホバ神は、アダムとエバに関して「人は善悪を知る点でわたしたちのひとりのようになった」と言われました。(創世記3:22)このエホバ神の言葉は、アダムとエバが、エホバ神やイエス・キリストのように自分で善悪の判断を下すという立場に立ったということを示していました。


 人間がエホバ神の支配を受け入れることはなぜ賢明なことですか。エホバ神は万物を創造されました。(創世記1:1)また、人間を創造され、命を与えました。(創世記2:7)み子は、エホバ神が創造の業を行なわれた時に、すぐれた働き手として働かれました。(箴言8:27〜30)ですから、物質宇宙や、この地球、また人間の体についてエホバ神とイエス・キリストはすべてを知り尽くしておられます。(イザヤ40:26。詩篇147:4;104:24;139:14,16)一方、人間はそれらの事について知らない事、理解できないことが多くあります。(ヨブ37:5)それで、人間はエホバ神が、人間より知識や理解の点で、また愛の点で勝っているということを認める必要があります。(箴言2:6。ヨハネ第一4:8)神が人間のために善悪の基準を定めた方が人間にとって益になることを認める必要があります。(イザヤ48:17)


 エホバ神が持たれる善悪の基準を定める権利というのは、エホバ神の支配権を意味しました。ところが悪魔サタンは人間がエホバ神の支配から独立しても、善悪の基準を神のように判断できて、死ぬ事がなく、その方が人間にとってうまくいくと主張していました。エホバ神はご自分の支配から離れては悪魔サタンも人間も成功しないことをご存知でしたが、ご自分の支配が不動のものとして高められるために、悪魔サタンが提起した主張を証明するための時間を悪魔サタンと人間に与えることにされました。(出エジプト9:16)


 それで悪魔サタンは人間に自由に影響を及ぼすことを一時的に許されました。人間もエホバ神の支配から独立して行動する事が許されました。それで悪魔サタンは地のすべての王国の権威と栄光を一時的に自由に支配する事が許されていました。それで、悪魔サタンはすべての王国の権威を自由に望む人間に与えることが許されているわけです。