啓示17章・大いなるバビロンが国家である理由

「また,七つの鉢を持つ七人のみ使いの一人が来て,わたしと話してこう言った。『さあ,多くの水の上に座る大娼婦に対する裁きをあなたに見せよう。地の王たちは彼女と淫行を犯し,地に住む者たちは彼女の淫行のぶどう酒に酔わされた。』(啓示17:1,2)


 ヨハネへの啓示の17章には、七つの頭と十本の角を持つ緋色の野獣の上に、額には「大いなるバビロン、娼婦たちと地の嫌悪すべきものとの母」という名がある大娼婦が座っている幻があります。(啓示17:5)その預言的な幻の中で、十本の角と緋色の野獣は娼婦を憎み、火で焼き尽くしてしまいます。(啓示17:16)この大娼婦とは誰でしょうか。


 この大娼婦の実体については、いろいろな説があります。エホバの証人はそれはあらゆる宗教を表わしていると主張しています。ある人々は、それはひとつの政治国家を表わしていると主張しています。どの説が聖書と調和していますか。考えてみましょう。


 エホバの証人発行の「聖書は実際に何を教えていますか」という本は、大いなるバビロンが、宗教上の帝国である理由として、大娼婦は「地の王たち」と淫行を犯したので、女が政治上の帝国でないことが分かると述べられています。


 しかし、聖書の中には、政治国家が他のすべての国家と淫行を犯すことが述べられています。聖書はティルスについて、「土地の表にある地のすべての王国と売春を行なう」と述べています。ところが、ティルスは昔は都市国家であり、単なる宗教組織ではありませんでした。(イザヤ23:17)


 それで、単に大娼婦が地の王たちと淫行を犯したという記述から、大娼婦が政治上の帝国ではないと言うことはできません。


 さらに、エホバの証人発行の「聖書の教え」の本は、大いなるバビロンの実体があらゆる宗教組織であることは、大いなるバビロンが「心霊術的な行ない」によってあらゆる国民を惑わしている、という記述からも裏付けられると述べられています。(啓示18:23)ところが、聖書は政治上の支配者であるバビロンの王が、心霊術である占いをすることを述べています。(エゼキエル21:21)政治国家であった古代バビロンは、占いや魔術などの心霊術に頼ることで有名でした。それで、単に大いなるバビロンが心霊術的な行ないをしていることで、大いなるバビロンの実体が諸宗教であるとは言えません。


 地の王たちは大娼婦と淫行を犯したと述べられていますが、聖書の「娼婦」や「売春」、「淫行」という語には比ゆ的な用法があります。


 比ゆ的な「娼婦」、「売春」、「淫行」が出てくるのは、エゼキエル23章です。エゼキエル23章には、二人の姉妹についてのたとえ話が出てきます。二人の姉妹はオホラと、オホリバという名前でした。そのたとえ話のオホラはサマリア、つまり北のイスラエル王国を、オホリバはエルサレムつまり南のユダ王国を表わしていました。(エゼキエル23:4)エホバ神はふたつの国家をご自分と結婚関係にあるものとしてご覧になりました。


 北のイスラエル王国を表わすオホラという女性についてこう述べられています。「オホラは,わたし(エホバ)に従属の身でありながら,売春を行なうようになり,自分を熱愛する者たち,近くにいたアッシリア人に欲情を燃やしつづけた。」(エゼキエル23:5)それで、北のイスラエル王国が、エホバ神に対して不忠実になり、アッシリアに対して売春を行なったと述べられています。


 オホラは人間の女性ではなく、サマリア、すなわち北のイスラエル王国を表わしているのですから、彼女の行なった売春は身体的、性的な売春ではありません。彼女の行なった売春は、エホバ神に対して忠実であるべき国家が、偶像崇拝を行ない、また他の国家に頼ったということです。


 南のユダ王国を表わす妹オホリバについても、こう述べられています。「その妹オホリバは彼女よりも激しく色情を起こして身を持ち崩し,その売春は姉の淫行をしのぐものとなった。彼女はアッシリアの子らに対して欲情を燃やした。」(エゼキエル23:5,8,11,12)オホリバは姉よりも、アッシリアに対して淫行と売春を行なったと述べられています。


 それで、エホバ神が結婚関係にあるとみなされたイスラエル王国ユダ王国は、神に不忠実になり、エジプトやアッシリアなど他の国々に援助を求めました。その時、エホバ神は彼女たちが「売春」を行ない「淫行」を犯したと言われました。それで、比ゆ的な意味の「売春」や「淫行」が国家によって犯されました。その結果エホバはオホラとオホリバに裁きをもたらされました。


 このように、聖書の神を崇拝すると主張する国が、他の国家に頼って、同盟関係に入るならば、それは比ゆ的に「売春」また「淫行」であり、その国家は比ゆ的な意味で「娼婦」であると言えます。それで、地の王たちと淫行を行う大いなるバビロンが政治国家でありうるということが分かるでしょう。


 それで、啓示17章の緋色の野獣と十本の角が大いなるバビロンを攻撃するというのは、政治的組織と政治的国家の戦いを意味しているでしょう。通常、戦争というのは、政治的実体同士で戦われます。それで、啓示17章で描写されている攻撃は、第三次世界大戦を意味するものと思われます。