ローマ5章・神はなぜアダムの子孫の罪を即座に治されなかったのですか

「一人の人を通して罪が世に入り,罪を通して死が入り,こうして死が,すべての人が罪をおかしたがゆえにすべての人に広がった・・・。」(ローマ5:12)
 

アダムは病気、疾患、悲しみ、苦痛などを子孫に伝えました。(ローマ 5:12)ある人は、アダムの子孫は直接神に不従順な行動をしていないのに、罪を受け継いだことを疑問に思います。


例えば、ある人々は、愛のある神であれば、アダムの罪と関係なかったアベルやその他の良い人々から、アダムから受け継いだ罪を取り除いて永遠に生きられるようにすることができたのではないだろうかと考えます。なぜ神はアダムの子孫から、罪の結果を即座に取り除くということをされなかっのでしょうか。


それには、大きく言ってふたつの理由がありました。ひとつの理由は、神の義と公正のためです。


聖書は、もし、義と公正が守られず、悪い業が処罰されないままで放任されるならば、人々が一層悪に走ると述べています。(伝道の書 8:11)例えば、人間の政府の支配者が法に対する民の違反に対して甘くなり、何の罰も加えないとすれば、どうなるでしょうか。不法は蔓延し、民の政府に対する敬意も損なわれ、無政府状態になるのではないでしょうか。


しかし、エホバの支配権の基礎になっているのは、義と公正の基準をしっかり守ることです。(詩編 89:14。ヨブ 40:8)聖書は、『罪の報いは死である』ことを示しています。(ローマ 6:23)もし、エホバが人類の罪深さを大目に見るとすれば、神はご自身の義の規準を無視することになったでしょう。そうなると、それは宇宙内で不法を助長し、宇宙の主権者としての神の立場を弱め、宇宙の永続的な平和を脅かす結果を招いたでしょう。それで、神は感傷に負けて人類の罪をすぐに許してしまうというようなことはできませんでした。


しかしながら、アダムの子孫は、憐みを必要としています。ダビデが述べたように、アダムの子孫は、アダムから受け継いだ罪により、罪を犯しやすい弱さがあることは事実です。(詩編51:5。ローマ7:25)それで、アダムの子孫に憐みが示される必要があります。


それで、エホバはご自分の義と公正の基準を守り、その上、アダムの罪を受け継いでしまった人類に憐みを示すために、贖いを求められました。聖書は人間が罪を犯した場合、エホバは罪の許しのために贖罪つまり贖いを求められることを示しています。それは、モーセの律法の要求に示されていました。罪を犯した人は、罪の許しのために動物の犠牲を捧げることが求められていました。(レビ5:6。出エジプト30:10)


エホバは人類の罪を覆う贖いとしてご自分の最愛のみ子の完全な命の犠牲を備えられました。(ヨハネ3:16。マタイ20:28)このみ子による贖いによって「罪の許し」が得られます。(コロサイ1:14)罪が許されるにあたって、そうした贖いが求めらることによって、初めて、罪の重大さが強調され、罪を犯した人は、二度と罪を犯すことのないようにしようという決意が鼓舞されます。そのようにして、神の義と公正さの基準は満たされ、罪を受け継いだアダムの子孫に対して憐みが示されます。


そのため、エホバは人類を罪から救い出すための完全な贖いを備えるために、何千年もかけて準備をされました。モーセの律法契約は、罪の許しのための贖いの必要性を人々に教えました。さらに、エホバはイエスが贖い主として派遣される社会環境を整えられました。また、エホバはご自分の独り子を贖い主として地上に派遣されるに当たり、み子を訓練されました。(ヨハネ14:31)そのために時間がかかりました。それゆえに、エホバはアダムの子孫が罪を受け継ぎ、そのまま存続していくままにされました。


さらに、エホバが人類の罪をエデンでの反逆の後、すぐに取り除くことをされなかったもう一つの理由は、エデンの園で、解決されなければならない重大な論争が提起されたからです。


サタンは、エデンの園で、人間は神から独立して神のように独自の善悪の基準を決めて首尾よくやっていけると主張しました。そして、神を、ご自分から独立するという自由を被造物から不当にも奪っていると非難することにより、神を偽り者としました。(創世記 3:1〜5)そのようなサタンの挑戦を無視することはできませんでした。もし答えを与えないままにしておくなら、神の支配権に対する確信も支持もついには弱まってしまったことでしょう。


エデンの園で、サタンからそのような挑戦が提起されたために、エホバは、サタンと人間に神から独立して独自の基準を決めて行動する、いわば自治をする自由を与えることにされました。そのようにして、サタンと人間は、神から独立して首尾よく自治ができるかどうか試みる自由と時間が与えられました。


そのために、エホバはアダムの子孫から、アダムの罪の影響を即座に取り除き、ご自分の支配を続けるということをされませんでした。それで、アダムとエバをすぐに処罰して裁くことをされず、生き永らえて子孫を産み出すようにされました。



神はアダムとエバが生き永らえて子孫を産み出すようにされた


アダムとアダムの子孫はエホバの言葉の通り、罪の影響のために最後には死んでしまいました。そして、これまで人間は、およそ六千年の間、人間が神から独立した結果がどのようなものになるのかを見ることになりました。人間の歴史を通して、悪魔サタンの提起した論争が全くサタンの側の誤りであることが徹底的に証明されています。


悪魔サタンと人間は、神から独立して独自の善悪の基準を定めて幸福な生活を送ることはできません。(箴言14:12)人間の歴史は、戦争や争い、憎しみ、病気や問題で満ちています。エホバは、悪魔サタンと人間の支配の結果が悪いことが徹底的に証明された後は、ご自分の政府である神の王国によって、アダムの子孫から、受け継いだ罪の痕跡を取り除いていかれます。


このような理由でエホバは、アダムの子孫からエデンでの反逆の後、即座に罪の影響を取り除くということはされませんでした。でも、ご自分の方法で、ご自分の予定の時にそうされます。エホバがそうされることは永遠の見地から見て、人間にとって最善の結果をもたらします。エホバは人類や被造物の最善の益と永遠の福祉を図っておられることを確信できます。(イザヤ48:17)


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