核の廃絶に向けて努力をするべき理由・旧ソ連

 

 1945年から約半世紀の間に2379回の核実験が各国で行われています。アメリカは2000回以上、ソ連は715回、フランスは210回、中国は46回、イギリス45回、パキスタンは6回、北朝鮮は4回、インドは2回の核実験をしたと言われています。他にもイスラエル南アフリカが核実験をしたとみなされています。


  2003年、ヨーロッパの科学者グループ欧州放射線防護委員会ECRRは、第二次大戦以後、放射線被曝により命を奪われた人の数を、6500万人と見積もっています。今回、特に旧ソ連の核実験の影響を取り上げたいと思います。


                    旧ソ連での核実験での影響
  
  ソ連は少なくとも1949年から1990年にかけて715回の核実験を行なっています。行なわれた核実験のうち約500回がカザフスタンセミパラチンスク実験場で行われました。カザフスタンは、ロシアと中国に国境を接しており、旧ソ連の一部でしたが、現在では独立しています。核実験の期間中、放出された放射性物質は、チェルノブイリ原発事故の5000倍 といわれています。



Lage des Atomwaffentestgeländes Semipalatinsk in Kasachstan (orange markiert)
Keine Beschreibung verfügbar.(Semipalatinsk)
オレンジ色がセミパラチンスク―ソ連での核実験地となり34万人以上が被災し癌の発生率が高い


 核実験の際、市民への避難警告はされませんでした。そのため、広い範囲で多くの住民が被曝しました。カザフスタン共和国国連大使の国連での演説によると、被爆者の数は、160万人とされます。そして、その数は死亡や(旧ソ連崩壊に伴う)人口流出により減少し、1998年に、約120万人の被害者がカザフスタンに住んでいるということです。


 セミパラチンスクの核実験による放射線被害を極秘研究するために「ソ連保健省附属第4診療所」が設置されました。ここには医師25人を含む125人のスタッフがいました。推定では、セミパラチンスク州の住民34万4000人が被曝しました。


 被曝した住民全体の患者数は、広島と長崎の被曝患者の2倍になると推定されています。この地域での癌の発生率は被曝していない地域と比較すると2〜3倍です。1960年代には、この地域での癌の致死率が被曝していない地域の1.7−2.0倍でした。(『中国の核実験と周辺住民の被曝』平成22年6月23日 羽倉洋行、一瀬昌嗣、両氏による素粒子論研究レポートより)


 セミパラチンスク州のガンの死亡率はロシアの他の地域と比べ三倍から四倍高く、食道ガンは十八倍以上である。被曝によって死産や流産、先天性異常の子どもの出産などが多発している。」というデータもあります。(『核に蝕まれる地球』より)


                      核実験場の遠隔地に及んだ影響


 旧ソ連により、カザフスタンセミパラチンスクSemipalatinsk(Semey )で核実験が行なわれました。中国では、ウィグル地区のロプノールLop Nurで核実験が行われました。そして、両方の核実験場の中間地点にあるカザフスタンのジャルケントZharkentやマカンチMakanchiで、住民の深刻な放射線被害が発生しています。ジャルケントは、セミパラチンスクから695キロ離れています。マカンチはセミパラミンスクから420キロ離れています。


 ソ連セミパラチンスクで被曝の影響を調査していた「ソ連保健省附属第4診療所」のスタッフは、1966年12月、中国とカザフスタンの国境沿いにあるマカンチから放射性物質を検出しました。第4診療所スタッフは、ロプノール核実験場から1000kmあまりも離れているジャルケントやマカンチの放射能を計測していきました。


 おそらく、ジャルケントやマカンチでは、放射性物質が風に乗って運ばれたと考えられます。ジャルケントとマカンチが両方の実験場の中間地点にあったことは、そこの被害を大きくしたと考えられます。また、両方の場所が核実験場から何百キロも離れていることは、放射能の影響が非常に広範囲に及ぶことを示しています。


 ジャルケントは、カザフスタン最大の都市アルマトイから北東へ約350キロにあります。人口は約四万五千人。付近の病院では、手足の奇形や、大きな腫瘍で盛り上がった背中を持つ子供たちが生まれています。ジャルケントの住民ジャンタグロバさんがため息をついて言います。「この町で生まれ育った私が異常と思うほど、ここ十数年でこんな赤ん坊が増えている」


 住民たちは、旧ソ連カザフスタンにあるセミパラチンスク核実験場に対して閉鎖を求める市民運動をしていました。しかし、彼女は天山山脈を越えた数百キロ東にあるロプノル核実験場へも疑いの目を向けました。


 1990年代初頭に、カザフスタン厚生省が行ったジャルケント周辺の0〜6歳の子どもの健康調査によると、ジャルケントの子どもたちの身長は他地域よりも8〜12センチメートルも低く、また、75%の子どもたちが鉄分不足の貧血、発育不全、病弱体質などの何らかの疾患を持っており、さらに高レベルで癌が発生し、毎年70名余りが白血病になっています。


 ジャルケントの病院で17年間、小児科を担当するアリハノワ・シンバット医師(45)は四肢の先天的異常、てんかん、貧血、白血病など、十年ほど前から増加した疾患名を次々と挙げました。この病院で、一週間に60人ほど生まれる新生児の一割に異常があると言います。「旧ソ連時代は、治療と研究機関を厳密に分けていた。私たちに課せられたのは、病気を治すことだけ」とシンバット医師は語りました。


 調査の結果、マカンチでは1949〜1996年の間に癌致死率が他地域に比べて1.3〜1.8倍高いことが明らかになりました。マカンチの標準死亡比(実死亡数÷人口10万対の死亡数)は広島・長崎において1〜2シーベルト被曝した被曝者の標準死亡比に匹敵します。


 このように核実験は人々の健康を害し、癌や白血病、奇形の発生率を高くすることは明白です。それで、ロシア政府に核実験をやめ、核兵器で人々の健康を損なうことはやめるようにお願い致します。