箴言27章・大娼婦の迫害という前途を見て行動する賢明さ

「災いを見て身を隠す者は明敏である。しかし,経験のない者たちは進んで行って,必ず報いを身に受ける。」(箴言22:3)


 大娼婦である大いなるバビロンの特徴は細かな所まで、アメリカ合衆国に当てはまっています。けれども、アメリカは神の民に対する流血を伴う迫害という点で、大いなるバビロンの特徴を示してはいないようです。


 つまり、啓示17章6節に「わたしは,その女が聖なる者たちの血とイエスの証人たちの血に酔っているのを見た。」とありますが、この聖句の述べる状況はアメリカには、見られていないようです。これは、ひとつには、ベトナム戦争の時に良心的兵役拒否者にどんなことが行なわれたか、資料と情報が不足しているせいかもしれません。しかしながら、後に述べるように私自身が現在入手できる証拠によると血なまぐさい事態は避けられているようです。


 この点以外では、多くの点で、アメリカは、大いなるバビロンの特徴を成就しています。もし、この点で、アメリカが預言を成就していないのなら、それはアメリカにとって良い兆候であると言えます。アメリカは良心的兵役拒否者に対して比較的穏健な対処をする伝統があるのかもしれません。そうであれば、アメリカ合衆国は、大患難までの存続期間を長くすることでしょう。


 アメリカでの最近の良心的兵役拒否者に対する扱いはどうなのでしょうか。アメリカでは、徴兵制が施行されたのは、南北戦争と二度の世界大戦のときだけであり、それ以外は志願兵制が普通でした。ベトナム戦争の際、一時的に徴兵制となり、18歳以上の男子に徴兵の義務がありました。しかし、ベトナム戦争の時、良心的兵役拒否者と脱走兵が増加し、1967年には両者合わせて1500人がカナダに逃亡し、1968年には、2800人にもなりました。推定では、逃亡者が3000人から5000人に上ると言われています。


 また、ベトナム戦争は、アメリカ史上最大規模の反戦運動を引き起こしました。その反戦運動アメリカ国内の労働者、市民、学生によるばかりでなく、ベトナム戦争で戦って帰還した元兵士や戦場およびアメリカ本国の現役兵士によっても行なわれました。


 1966年には、三人の兵士が「われわれは皆殺しの戦争の片棒を担ぎたくない」としてベトナムへの派遣命令を拒否しました。これに対して軍法会議は三年から五年の重労働刑を科しました。この三人には、全国から支援が寄せられ、刑期は短縮されました。同年、軍医がベトナム派遣予定の衛生兵教育を拒否した罪で禁固三年の判決を受けました。また、徴兵拒否で監獄入りし釈放された人がいたことも分かっています。このため、1973年には徴兵制が廃止され、志願兵制に移行しました。これらの例から、ベトナム戦争のときにも、良心的兵役拒否者に対して、比較的に穏健な対処が行なわれ、流血の事態は避けられていたであろうと思われます。


 しかしながら、2003年のイラク戦争のとき、現地派遣軍が手薄となり、その補充としてそもそも戦場での戦闘を前提としていない州兵が派遣されることになり、議会内外から徴兵制復活を望む声が出てきたということです。もし、徴兵制が復活することになると、アメリカ合衆国では、良心的兵役拒否者の神の僕を対象とした大々的な迫害を行なう可能性もあります。


 現在、神の民は、アメリカ合衆国の中で法的な保護を受けているので、アメリカ合衆国政府の寛大な計らいに感謝することができます。けれども、箴言22章3節の冒頭の聖句は、災いを前途に見て、身を隠す者は明敏であると述べています。この言葉は迫害を予見したら、前もって行動し、大いなるバビロンの外に出るのが賢明であることを示しているのではないでしょうか。


 エホバ神は前もって厳しい迫害の預言的警告を与えてくださっているのですから、神の僕は、大いなるバビロンの外へ前もって遠くに逃げることが賢明なのではないでしょうか。(エレミヤ49:29,30)


〔参考文献〕

ベトナム戦争アメリカ もう一つのアメリカ史 白井洋子 2006年   156p刀水書房

面白いほどよくわかるアメリカ 鈴木晟・荒木教夫共著 2006年 日本文芸社

アメリカ 理念と現実 瀬戸岡紘著  2005年 (有)時潮社 93,94,129p

わからなくなった人のためのアメリカ学入門 2003年  洋泉社MOOK



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