ダニエル8章・北の王である常供のものを取り去る小さな角

 「そして、そのうちの一つから、別の角、小さな角が出て来た。それは・・・その軍の幾らかと星の幾つかを地に落とし、これを踏みにじるのであった。・・・その 方(軍の君)から常供のものが取り去られた。・・・また彼は力ある者たちをまさに滅びに至らせ、・・・そして、君の君たる者に向かって立ち上がるが、人手 によらずして砕かれることになる。」(ダニエル8:9,10,24,25)


 ダニエル8章の預言によると、「四つの王国」の中から「小さい角」が出てきます。この小さな角が現れるのは、「終わりの時」です。(ダニエル8:17)ですから、この「小さな角」に関する預言の成就は、私たちの時代から将来にわたると考えられます。ですから、この「小さな角」の実体を見分けるのは大切なことです。



 この小さな角とは何を表しているのでしょうか。「角」とは、「王」であり、「獣」ですから、世界強国を表しています。(ダニエル7:11,12,24)ダニエル8章には、ダニエルはまず、ギリシャがメディア・ペルシャに取って代わり、四つの王国に分かれることについての預言を受けました。(ダニエル8:20−22)


 メディア・ペルシャが分かれた四つの王国の「一つから」「小さい角が出てきた」と預言されています。それは「非常に大きくなって」いきます。(ダニエル8:9)


 メディア・ペルシャアルクサンドロス大王が征服しましたが、その王国は、メソポタミアとシリアのセレウコスと、エジプトとパレスチナプトレマイオス小アジアトラキアリュシマコスマケドニアギリシャのカッサンドロスの四つの帝国に分かれました。その四つに帝国から小さな角が出てくることになっています。




Kingdoms of the Diadochi in 281 BC: the Ptolemaic Kingdom (dark blue), the Seleucid Empire (yellow), Kingdom of Pergamon (orange), and Macedonia (green). Also shown are the Roman Republic (light blue), the Carthaginian Republic (purple), and the Kingdom of Epirus (red).Captain_Blood - Own work States of the Diadochi, c. 300 BC(alexanderempire4)
ギリシャアレクサンドロス大王の帝国は四つに分かれその中の一つから小さな角が生ずることになっています


 ところで、ダニエル8章の「小さな角」に関する描写と北の王に関する描写はとても似通っています。ダニエル8章の「小さな角」は、「必ず成功を収め」ると述べられています。(ダニエル8:23,24)最終的に南の王の攻撃に成功する北の王も「必ず成功を収める」と述べられています。(ダニエル11:36)


 そして、「小さな角」は「天の軍」の幾らかと「星の幾つか」を踏みにじります。(ダニエル8:10)「天の軍」に属する「星」とは、聖書を研究する天的希望を持っているクリスチャンです。(申命記33:1,2。ローマ9:6。啓示14:3。ダニエル12:3)天的希望を持つクリスチャンたちが、「小さな角」によって、霊的につまずくことが予告されています。(ダニエル8:25)


 ダニエル11章の預言の中でも、北の王のために、「洞察力のある者たちの中にもつまずかされる者がいる」と預言されています。(ダニエル11:32,34)洞察力のある者たちとは、聖書を研究するクリスチャンたちです。ここでも、小さな角と北の王の描写が同じです。


 そして、その「小さな角」によって「軍の君」から「常供のもの」が取り去られることが予告されています。(ダニエル8:11)「エホバの軍の君」は、天にいたイエス・キリストで、「常供のもの」は、今日では「み名を公に宣明する」こと、また、善を行なって他の人を援助することです。(ヨシュア5:14。コリント第一10:1−4。出エジプト29:42。ヘブライ13:15,16。ホセア14:2)


 ダニエル11章の預言の中でも、北の王が「常供のものをも除き去る」ことが預言されています。(ダニエル11:31)ここでも、小さな角と北の王の描写が同じです。このことから、「小さな角」は「北の王」を表していると結論できます。(ダニエル11:40−42。啓示17:16)


 キリストから「常供のもの」が取り去られるとは、イエス・キリストによって命じられた宣べ伝える業と弟子を作る業や、クリスチャンが互いに助け合う業が途絶することを意味しているのでしょう。(マタイ24:14;28:19,20。ヨハネ13:34。啓示14:4,6,7))


 しかし、「聖なる場所は必ずその正しい場所にされる」ことになっています。(ダニエル8:14)ですから、聖書の真の理解が受け入れられることによって、エホバへの世界的な崇拝と奉仕が回復することが預言されています。それは、大患難の前後でしょう。(啓示7:9,15)


 そして、小さな角は、「君の君たる者」エホバに向かって真っ向から対抗しますが、「人手によらずして砕かれる」ことになります。(ダニエル8:24,25;12:7。エゼキエル39:1,2)ダニエル11章の預言でも、北の王は、「聖なる飾りの山」を攻撃した後、「彼は必ず自分に終わりに至る」ことが預言されています。(ダニエル11:44,45)


 ですから、大患難の後、つまり北の王が南の王に最終攻撃をして滅ぼし、北の王の時代になってから後、イエス・キリストの天の軍勢によって北の王は滅ぼされることになります。そして、神の王国が全地を支配し、キリストの千年統治が始まり、地上は楽園になります。


 小さな角、北の王はおそらく実体が既に現れていると思いますが、今は、まだどの特定の国家であるかは分かりません。北の王の特徴をすべてあわせ持つ国家はまだ存在していないと思います。現在、中東のイスラム教の国のどこかが北の王になるでしょう。