ダニエル11章・現代の北の王と南の王に関する預言(4)


 今回ダニエル11章40節以降43節までの解釈に取り組んでみたいと思います。そこには、北の王が南の王を最終的に攻撃する時に、つまり大患難の時に、世界情勢がどのようになるかが説明されています。


 ダニエル11章40節によると、「終わりの時」に、北の王は南の王と押し合います。ダニエル書の「終わりの時」とはいつなのでしょうか。



「終わりの時」とは北の王が登場して後のことです。(ダニエル8:17,23)それは、洞察力のある者たちが「精錬」や「清め」を受けた後に臨むようです。(ダニエル11:35)そして、終わりの時に北の王と南の王は押し合いをします。「終わりの時」とは大患難の時を含んでいます。(ダニエル11:40)


 その押し合いは、大患難に至る前での二度の大きな戦いのことを言っていると以前考えましたが、ダニエル11章35節には、「終わりの時」は、洞察力のある者たちが「精錬」や「清め」を受けた後に臨むと書かれています。ですから、終わりの時は、さらにもっと大患難の直前を意味するかもしれません。


 それで、「終わりの時」の押し合いは、大患難の直前の北の王と南の王の間の何らかの軍事的な紛争もしくは論争もしくは利権を争うことを意味するのかもしれません。(裁き人19:22) また、終わりの時に「真の知識が満ちあふれ」ます。(ダニエル12:4)


 まだ北と南は本格的な押し合いはしていないのではないかと思います。また、洞察力のある者たちの本格的な「精錬」もまだ始まっていないでしょう。


 でも、北と南の対決の構図は何らかの形ですでにある程度表れていると思います。それで、今は終わりの時が始まろうとしている時ではないかと思います。


そして、押し合いの後、北の王は南の王に対して「兵車と騎手と多くの船とをもって強襲する」ことが預言されています。そして、北の王の軍勢は、「多くの土地に入り、みなぎりあふれて通り行きます。」(ダニエル11:40)


 「強襲」という言葉は、聖書の他の部分にありませんが、突然に強行突撃をすることを意味しているのでしょう。北の王の軍勢は、みなぎりあふれるのですから、それは人海戦術であることが分かります。




Unknown - Apoloniusz Zawilski (1972) "Bitwy Polskiego Września" ("Battles of Polish September"), Warsaw: Nasza Księgarnia ISBN 83-218-0817-4 (current edition)…Polish infantry marching.(manysoldiers3)
北の王は人海戦術で南の王に総攻撃をかけることが預言されています



 そして、北の王は、すべての人員と軍備をその総攻撃に投入します。北の王は、自らと「緋色の野獣」に属する十人の王、すなわち、北の王の設立した国際組織に属するすべての諸国家の軍勢を率いて南の王に総攻撃をかけると考えられます。(啓示17:16)


 北の王が人海戦術に訴えると言うことも、荒廃をもたらす嫌悪すべきものに属する国家の国民は、ほとんど南の王に対する総攻撃に加わるように大きな圧力を受けることが予想できます。このことは、北の王によって荒廃をもたらす嫌悪すべきものが設立されたとしても、その組織に属さないようにするのが賢明であることを示しています。そのようにして、大患難の戦闘に中立を保つことができます。


 北の王は、「飾りの地に入り」ます。「多くの土地がつまずきに渡され」ます。(ダニエル11:41)私は、「飾りの地」が特定の国家であるとは考えていません。なぜなら、聖書は一世紀にユダヤは神の民として捨てられて、それ以降、クリスチャンはあらゆる国籍の人々によって構成されるようになったことを示しているからです。(ローマ3:29;9:24;10:12)


 ですから、北の王はおそらく幾つかの国に存在する神の民を軍事的に攻撃するのでしょう。そして、飾りの地に関連して「多くの土地」と言われているということは、神の民が全世界の多くの土地に分散していることを裏付けていると思います。


 なぜ、「飾りの地」、神の民の場所が北の王に攻撃されるのでしょうか。おそらく、神の民の中には、「荒廃をもたらす嫌悪すべきものが・・・聖なる場所に立っているのを見かけるなら、・・・その時、ユダヤにいる者は山に逃げ始めなさい」というイエスの助言に従っていない者たちがいるのでしょう。(マタイ24:15,16)


 当然、クリスチャンのグループの中でも、聖書の預言を正しく解釈できていないグループは、北の王が国際組織を設立しても、その時が山に逃げるべき時であることを識別することはできないでしょう。もし、エホバの証人が、このままイエスの言われた「山」はクリスチャンの組織であると解釈し続けるならば、決して文字通りに山間部に逃げることはしないでしょう。


 山に逃げていない神の民は、攻撃を受けます。北の王は、平野部はなめつくすように攻撃していくでしょう。山にいる神の民も、家の屋上にいないならば、その攻撃に巻き込まれる可能性があるでしょう。(マタイ24:17)


 一方、おそらく北の王は、聖書の預言を知っていて、山の家の屋上や野に逃げている一般の人々が罪のない人々であることを認識してその命を容赦する程までは、聖書の神エホバに敬意を払うでしょう。



The gardens at Haddon Hall by ell brown (countryrooftopbuilding1)
おそらく大患難の時北の王は山の家の屋上にいる人々は見逃してくれるでしょう


 しかし、「エドム、モアブ、またアンモンの子らの主立った部分はその手から逃れ出」ます。エドム、モアブ、アンモンの子らとは誰を表すのでしょうか。この言葉を文字通りに解釈することはできません。現在、エドム、モアブ、アンモンはすでに昔に滅びてしまいました。


 エドム、モアブ、アンモンとは、イスラエルの周辺国家で、イスラエルと何度も戦闘を交えました。しかし、預言の中のエドム、モアブ、アンモンは、神の民から攻撃を受け、その一部はイスラエルの臣民となります。(イザヤ11:14)


 ですから、最初は神の民に敵対していても、最後には神の民の影響下に入った諸国民の中には、おそらく、大患難の戦いに加わらない国家があるのでしょう。そして、北の王が攻撃を加えない諸国家が存在するのでしょう。


 しかし、ダニエル11章42節によると、北の王は、「それらの土地に向かってしきりにその手を突き出す」ことが預言されています。結局南の王との軍事同盟にあって南の王と共に軍事行動に加わる土地に関しては、たとえ、大患難の戦闘に加わっていなくても、北の王は攻撃する可能性があるでしょう。


 「エジプトの地は逃れ出るものとはならない」と預言されています。(ダニエル11:42)エジプトの地とはどこでしょうか。啓示の書に登場する「エジプトと呼ばれる大いなる都市」は大いなるバビロン、すなわち南の王を意味します。(啓示11:8;16:19;17:18;18:10,21)ですから、エジプトすなわち南の王であるアメリカ合衆国は北の王の徹底的な攻撃を免れることは決してできないでしょう。それで、南の王は、北の王とその仲間の王たちの攻撃を受けて、全滅するでしょう。(啓示17:16)



Morning Glow by Emmanuel_D.Photography (losangels2)
南の王の土地エジプトは北の王の総攻撃を免れられず全滅するでしょう



 そして、北の王は、「隠された金銀の宝をまさに支配し、またエジプトのすべての望ましい物を支配し」ます。望ましい物のあるエジプトとは、前の節で述べたように、アメリカを意味するでしょう。


 エジプトの望ましい物とは、アメリカの預金や物質の富を意味するでしょう。北の王は、大患難の攻撃をしてアメリカを初めとして諸国家の財産や資産を支配するようになるようです。おそらく他国に置いてある隠し預金なども北の王によって奪われることになるのでしょう。


 また、ダニエル書の中には、ダニエルが何度も「望ましい人」と述べられています。(ダニエル9:23)ですから、望ましい特質を持つアメリカの人々の中に、北の王の側につく人がいることをこれは意味しているのかもしれません。


 このことは、北の王が、大患難によってさらに一層大きな権力をとるようになることを示しています。彼は南の王の資産を受け継ぎ世界の経済を支配する力を手に入れるのでしょう。
 
 さらに、「リビア人とエチオピア人は彼の歩みにつく」ことが預言されています。(ダニエル11:43)リビア人とエチオピア人とは誰でしょうか。


 リビアはエジプトの隣国であり、エチオピアスーダンをはさんだ隣国でありエジプトにほど近い国です。リビアエチオピアはエジプトの同盟国としてエジプトと共に戦うこともありました。(歴代第二12:3)ですから、以前南の王と同盟関係にあった国家の中にも南の王との同盟関係をやめて北の王の側につく国家があるということなのでしょう。



Central Command Responsibility Map by Image Editor (egyptmap2)
リビア人とエチオピア人はエジプトと同盟国でしたが北の王の側につきます



 私たちは、南の王が総攻撃を受けて壊滅することを考えると時間があるうちに、大いなるバビロンから出るようにという神の命令に従うのが賢明であると言えます。聖書は「彼女の災厄を共に受けることを望まないなら、彼女から出なさい」と命じています。(啓示18:4)




Departure LAX by Emrys.Roberts (atlanta4)
大患難で南の王が北の王により壊滅することを考えると時間があるうちに大いなるバビロンから出るのが賢明です




 そして、神の民は大患難が始まる前に山に逃れる必要があります。行動ができるように、聖書が果たして信頼できる本かどうか、聖書はどんなことを預言しているかを確かめる必要があります。また、聖書の預言の成就を見守っていく必要があります。


 次回、ダニエル11章44節以降の解釈に取り組みたいと思います。