サムエル第一28章・霊媒によって死者と交信できますか

「そこで，その女は言った，『だれをあなたのために連れ出しましょうか』。これに対して彼は言った，『わたしのためにサムエルを連れ出してくれ』。・・・すると，“サムエル”はサウルに言いだした，『なぜあなたはわたしを連れ出させて，わたしをかき乱したのか』。これに対してサウルは言った，『わたしは非常な窮境に陥っています。フィリスティア人がわたしと戦っていますが，神はわたしから離れ，預言者を通しても，夢によっても，もはやわたしに答えてくださらなくなったのです。それでわたしは，どうすればよいかを知らせていただくために，あなたをお呼びしているのです』。(サムエル第一28：11,15)

今日でも、ある人は死者の霊が存在していて、生きている人に音信を伝えるということを信じています。また霊媒は死んだ人との仲介をすると信じられています。聖書は何と述べていますか。

かつてサウル王に将来の王として油をそそいだ預言者サムエルは、死んでしまいました。イスラエル人はラマという都市に彼を葬りました。（サムエル第一28：3）エホバ神は不忠実なサウル王を離れ、サウル王に対して預言者を通しても、夢によっても導きを与えませんでした。そのため失望したサウル王はエン・ドルの霊媒のところに行ってサムエルを連れ出してもらいました。呼び出されたサムエルは死んだサムエルだったのでしょうか。死者の霊が存在するのでしょうか。

しかし、現れたのが、「サムエル」であるとするとおかしいことが出てきます。モーセの律法下では、死者を呼び出して死者に問い尋ねることは禁止されていました。(申命記18：12。レビ19：31)レビ20章27節に、「男や女でその内に霊媒の霊や予言の霊が宿る者，その者は必ず死に処せられるべきである。」とあり、霊媒術者は死に処されることになっていました。実際、サウル王はモーセの律法に従って、霊媒や出来事の職業的予告者をユダの地から除いてしまっていました。(サムエル第一28：3)ですから、サウル王はモーセの律法に真っ向から反することを行なっていました。

サウル王は、敵が攻めてきたので、恐れてエホバに伺いましたが、エホバ神は、サウル王に対して、夢によっても、ウリムによっても、預言者によってもサウル王に決して答えようとされませんでした。(サムエル第一28:6)それなのに、エホバ神がご自分がモーセの律法で禁じておられる霊媒によって、サウル王に答えられるはずがありません。

しかし、女霊媒者に呼び出されたのは、本物の「サムエル」のように見えます。その「サムエル」は、サウル王がエホバ神に見捨てられていたことを正しく述べました。また、サウル王とイスラエルが、フィリスティア人に敗北して、サウル王と息子たちが死んでしまうことを正しく述べました。(サムエル第一28:16,19)ただ「サムエル」のふりをしていた悪霊は、「明日」と述べましたが、サウル王が死んだのは、次の日ではなかったかもしれません。

それで、霊媒の呼び出す「死者」がある程度正確に状況を述べたり、正確に将来を予言したりする場合があることが分かります。しかし、聖書は霊媒に相談することのないようにと述べています。霊媒に相談することのないようにと述べているのですから、実際に死者と交信できるはずがありません。そして、霊媒に相談するのを禁じているのは、霊媒の伝える音信が完全に間違っているからではありません。本当に死者と交信できるのでしたら、愛の神がそれを禁じることはないでしょう。また、実際に死者と連絡が取れるのなら、霊媒に相談することによって汚れると述べるはずがありません。(レビ19:31)

サウル王は、女が呼び出した「サムエル」を、預言者サムエル自身であると信じ込みましたが、死んだ預言者サムエル自身も、もし彼に意識があったとしても、エホバ神に不忠実になっていたサウル王と会おうとするはずがありません。ですから、サムエルのふりをしていたのは、他の誰かでしょう。実のところ、聖書は死者は意識がなくて、何もできなくなっていると述べています。(伝道の書9:5，10)

霊媒の女によっての問いに答えたのは、エホバ神ではなく、また死んだ預言者サムエルでもありませんでした。完全にエホバ神に見捨てられていたサウル王に答えたのは、悪霊であったに違いありません。

なぜなら、聖書によると、悪魔サタンはエデンの園でエバに「あなた方は決して死ぬようなことはありません」と言いました。（創世記3：4）それで悪魔サタンは、人間が死んでも意識が存続して「決して死ぬようなことは」ないことを人間に信じさせたいと願っています。（創世記3：4，5）それで、悪魔サタンの配下にある悪霊は死者が無意識であるという聖書の記述を信じさせたくないと願っています。

けれども、これだけ多くの人が死者の霊が存在すると信じているのではないでしょうか。啓示12章9節には、悪魔またサタンは、「人の住む全地を惑わしている」と述べられています。さらに悪魔サタンは「光の使い」に変様して光の天使のふりをしていると述べられています。（コリント第二11：14）

それで、聖書は悪魔サタンが大掛かりに人類を惑わしていると述べています。死者の霊のふりをしているのは、悪魔サタンか悪魔サタンの支配下にある悪霊たちです。悪魔サタンや悪霊たちは、人間を欺いて死者の霊のふりをして人間の前に現れます。そのようにして、人間が知らない情報を伝えることによって、あたかも人間に益をもたらす「光の使い」のふりをします。そのようにして、悪魔サタンは「人の住む全地を惑わして」います。

それで、霊媒が呼び出すのは、悪魔サタンか悪霊なので、聖書は霊媒などの心霊術を行うことによって汚れると述べています。聖書の教えに背いて霊媒に相談するならば、サタンや悪霊と交信することになるので、心霊術を避けてエホバ神の不興を買うことのないようにするのが賢明です。(ガラテア5:19〜21)