啓示13章・子羊のような二本の角のある野獣とは何か

「また,わたしは別の野獣が地から上って行くのを見た。それには子羊のような二本の角があった。それは龍のように話しはじめた。」(啓示13:11)

 啓示13章には、まず1,2節に十本の角と七つの頭のある第一の野獣が登場します。また、啓示13章11節には、子羊のような二本の角がある別の野獣が登場します。別の野獣は、第一の野獣の像を作るようにと地に住む者たちに言います。(啓示13:14)では、子羊のような二本の角がある野獣とは何を表しているでしょうか。


 子羊という語は啓示の書の中で29回出てきます。子羊とは贖いの犠牲となられたイエス・キリストを表わしています。(ペテロ第一1:18,19。啓示5:9)啓示5章6節では、子羊には七つの角がありました。それで子羊のような二本の角がある野獣とは子羊であるイエス・キリストのように見える政治国家でしょう。


 ですから、子羊のような二本の角を持つ野獣は、キリスト教を奉じているように見える国であることを示しているでしょう。キリスト教を奉じているように見える国の最たる国は、どこでしょうか。2000年の世界60カ国価値観データブックによると、神の存在を信じる割合は、アメリカ人94.4%、イギリス人、60.5%、フランス人、55.9%、ドイツ人、61.1%、日本人35%でした。ハリス社の2007年世論調査によると、アメリカ成人で神を信じる人は82%です。ですからアメリカ合衆国の主要な宗教はキリスト教と言えます。それで、諸国家の中でアメリカ合衆国がとりわけ子羊の角に似た二本の角を持つ獣で表わされていてもおかしくないでしょう。


 また、ある百科事典の2000年のデータによると、米国のキリスト教徒全体は2億2700万人で、福音派は9400万人近くで全体の40%を超えており、ファンダメンタリズムに属しているのは2000万人です。2002年の調査によれば、米国においてプロテスタント56%、カトリック27%、ユダヤ教2%ほかとなっています。こうしたデータもアメリカの主要な宗教がキリスト教であることを示しています。


 アメリカ合衆国のドル紙幣とコインには、「我々は神を信じる」と記されています。アメリカ国歌のしめくくりの一節は「われらは神を信じる。―これこそ、われらのモットーだ。」となっています。こうした事実もキリスト教アメリカに根付いていることを示しています。


 子羊のような二本の角ある野獣とは、アメリカ合衆国ですか。 それとも、英米二重世界強国ですか。角とは何を表しているでしょうか。ダニエル8章20節に出てくる二本の角のある雄羊は、それはメディアとペルシャの王を表していると述べられています。メディア人はひとつの王国を形成して、一時メディア人の王国はペルシャ人に対して優勢な地位を保持していました。しかし、後になって、ペルシャはメディアを征服して、メディア・ペルシャ帝国を形成しました。(ダニエル8:3,20)しかし、その後もメディア・ペルシャ世界帝国の中でメディア人とペルシャ人はどちらも有力な政治勢力でした。(ダニエル6:8)ですから、二本の角と言う場合、ひとつの政治国家の中でのふたつの有力な政治勢力を表すこともあります。


 そして、ダニエル書の中で一頭の雄羊はメディア・ペルシャ世界帝国という一つの政治国家を表していました。それで、一頭の子羊はひとつの政治国家を表わすでしょう。ですから、子羊のような野獣はアメリカ合衆国であり、その二本の角とはアメリカ合衆国の中の有力な政党である、民主党共和党と考えることができるでしょう。


 それで、啓示13章11節に出てくる子羊のような二本の角を持つ別の野獣はアメリカ合衆国を表わしているでしょう。このことは、また次の機会に詳しく述べますが、第一の野獣の像を造るようにと唱導したのがアメリカであったことも、アメリカが子羊のような二本の角を持つ野獣であることを裏付けています。


〔参考文献〕

神の国アメリカ論理  上坂昇 2008年 株式会社明石書店

面白いほどよくわかるアメリカ 鈴木晟・荒木教夫共著 2006年 日本文芸社

アメリカ 理念と現実 瀬戸丘絋著 2005年  時潮社