ヘブライ13章・婚前交渉はなぜいけないのか

「結婚はすべての人の間で誉れあるものとされるべきです。また結婚の床は汚れのないものとすべきです。神は淫行の者や姦淫を行なう者を裁かれるからです。」(ヘブライ13:4)


 今日、聖書の道徳基準は、知らない人も大勢います。そして、結婚していないのに、性関係を持つ人は少なくありません。そして、「二人が愛し合っていれば,婚前交渉をしても構わないではないか。どうして,結婚するまで待つ必要があるのか。」と考えます。では、なぜ婚前交渉をすべきではないのでしょうか。聖書の中の例からどのような教訓を得られるかを考えてみましょう。


 基本的に、聖書は結婚の取り決めは、神が設けられたものであり、性関係を持つことが許されるのは、結婚している男女だけであることを示しています。(創世記2:22〜24。ヘブライ13:4)結婚していない人が性関係を持つとどうなるでしょうか。


 ある人は、婚前交渉を持つなら、ふたりの親密度が増すと考えるかもしれませんし、そして、その後、結婚したら良いと考えるかもしれません。ところが、人間の予想通り、事は運ばないことがあることを聖書の例は示しています。ダビデの息子アムノンは、異母姉妹のタマルに恋をしました。(サムエル第二13:1)そして、タマルと無理やり性関係を持ちました。アムノンとタマルとの性関係は近親相姦でもありました。


 ところが、アムノンがタマルと性関係を持った後について聖書はこのように記録しています。「非常に大きな憎しみにかられて彼女を憎みはじめた。それは彼女を憎んだその憎しみが,彼女を愛したその愛よりも大きかったからである。そのため,アムノンは彼女に言った,『起きて,出て行け!』」(サムエル第二13:15)






アムノンから追い出されるタマル


 アムノンは、タマルと性関係を持った後、タマルに対する感情が変化することなど、予見し得たでしょうか。それで、婚前交渉を持った後、必ずしも二人の親密度が増すわけでないことを、アムノンとタマルの例は示しています。また、当然、アムノンとタマルは結婚することもありませんでした。しかし、アムノンとタマルは異母兄弟だったので、モーセの律法下では、結婚することを禁じられていました。


 また、別の恋と婚前交渉の記録が聖書にあります。ヒビ人シェケムがヤコブの娘ディナを犯した後、シェケムはディナを恋するようになり、ディナに言い寄るようになりました。(創世記34:2,3)そして、シェケムはディナを妻にもらいたいという希望を言い表しました。シェケムの場合は、ディナと性関係を持ったことがディナに対する気持ちを強めるものとなりました。それで、確かに、人によっては婚前交渉で相手への気持ちが強まり、結婚につながるという人もいるでしょう。


 ところが、ディナの兄弟たちであるヤコブの息子たちは、ディナが犯されたことに腹を立てました。それで、ディナの兄弟たちは、シェケムがディナと結婚することを望みませんでした。結果的に、ディナの兄弟たちは、シェケムの都市の男たちを殺してしまいました。それで、無理やり婚前交渉をしてその後結婚することを望んだとしても、周囲の反対などのために必ずしも結婚できない状況が生じえるということが分かります。無理に婚前交渉を持つことは、予想できない多くの問題を生じさせることがあります。


 ある人は、ただ一度、婚前交渉を持っただけだったら、妊娠はしないと考えるかもしれません。しかし、ダビデが、人妻のバテシバとたった一度、性関係を持った後、バテシバは妊娠してしまいました。その妊娠は望まれた妊娠ではありませんでした。ダビデは、その姦淫を隠そうとして、画策しましたが、うまくいかなかったために、バテシバの夫が殺されるように取り計らうという罪を犯しました。


 確かに、ダビデは、バテシバとの婚前交渉の結果、バテシバと結婚しました。しかし、必ず、姦淫となる婚前交渉は、被害者を生み出すということが分かります。


 また、婚前交渉は、バテシバのように望まれない妊娠という結果を生じさせるかもしれません。婚前交渉の結果を隠そうとして堕胎をしようとするかもしれません。婚前交渉の相手が既婚者であるなら、三角関係に基づく問題が生じるでしょう。殺人なども起きることもあるかもしれません。


 ダビデとバテシバの婚前交渉の場合は、ダビデがバテシバの夫を殺しましたが、通常は、妻を奪われた夫が嫉妬で怒り狂うでしょう。妻を奪われた夫の方が、復しゅうのために姦淫を犯した男性を殺すということさえ起こり得ます。(箴言6:26〜29,32〜35)


 箴言の書は、他人の妻と、婚前交渉を行なうことの結果をこのように述べています。「女と姦淫を犯す者は心が欠けており,そうする者は自分の魂を滅びに陥れるのである。彼は災厄と不名誉を見いだし,そのそしりはぬぐい去られることがない。」姦淫となる婚前交渉を行なうならば、災厄と不名誉を経験することになると述べています。


 確かに、他人の妻と婚前交渉をする人は、「不名誉を見いだし」、一般社会での評判は落ちることになるのが普通でしょう。ダビデの場合は、婚前交渉のために自分の子どもたちからの尊敬心を失ったことでしょう。それで、後になってダビデの息子たちはダビデに反逆し、ダビデの王権を奪おうとしました。周囲の人々の良い評判と敬意を失ってしまうというのは、何と大きな損失でしょうか。


 既婚者との姦淫となる婚前交渉は、他の人との関係を損なうだけではありません。神との関係も破壊します。ヨセフは、若い時、エジプトに奴隷として売られ、ファラオの役人であるポテパルのもとで、奴隷として働くことになりました。ヨセフが美しい若者として成長したので、ボテパルの妻は、ヨセフに目をつけヨセフに一緒に寝るようにと日ごとに迫りました。


 しかし、ヨセフは、「どうしてわたしはこの大きな悪行を犯して,まさに神に対して罪をおかすことなどできるでしょうか」と言ってポテパルの妻の誘惑を退けました。(創世記39:9,10)ヨセフは、婚前交渉を大きな悪行、神に対して罪を犯すことだと述べました。そのように神に対して罪を犯すことを避けたので、後になってヨセフは神の助けと祝福により、エジプトのファラオに次ぐ者となりました。


 ところが、ダビデの方は、バテシバと姦淫となる婚前交渉をしたので、神に対して罪を犯しました。ダビデが罪を指摘された時、ダビデが罪を認め悔い改めたので、ダビデ自身は、かろうじて死ぬことは免れました。


 しかし、エホバは、ダビデとバテシバの婚前交渉を非とされました。そのためにダビデは罰を受けました。ダビデとバテシバの婚前交渉の結果生まれた子どもは死ぬことになりました。(サムエル第二12:14)エホバはまた、ダビデの家から剣の災いが離れないことを予告されました。(サムエル第二12:10)ダビデの息子たちがダビデに反逆することになり、ダビデの家族に絶えず問題が生じました。


 これは、ダビデが神に対して罪を犯したためにエホバの祝福が失われたことによって生じました。また、ダビデの姦淫である婚前交渉という悪行のために、ダビデの息子たちのダビデに対する愛と敬意が失われたことによる結果でもあったでしょう。


 それで、婚前交渉は神との関係を損ない、神の祝福を失わせるものとなることが分かります。こうして聖書中の例を検討してみると、婚前交渉の結果は悪いものであることが分かります。私たちは、婚前交渉を行なって、当然の悪い結果を刈り取ったり、神との関係を破壊してしまったりしないようにしましょう。かえって神の道徳基準を守るように努めてヨセフのように神の恵みを受けるようにしましょう。


 これまで、すでに婚前交渉を行なってしまった人は、ダビデのように罪を認め、悔い改めてそれ以上エホバの恵みを失わないように努めましょう。


サムエル第二13章・性的虐待の犠牲者とならないために