マタイ26章・今日あらゆる国々における良心的兵役拒否

「あなたの剣を元の所に納めなさい。すべて剣を取る者は剣によって滅びるのです。」(マタイ26:52)


 イエスは冒頭の聖句のように言われました。ですから、クリスチャンは剣すなわち武器をとるべきではありません。クリスチャンは武器をもって戦って、他の人の命を奪うことはどんな政治的実体のためであっても避けるべきです。では、今日あらゆる国々における良心的兵役拒否はどのような状況になっているでしょうか。


 外務省やCIA World Fact Bookの資料によると現在地球上に軍隊または国防のため武装組織を保有する約170か国のうち約67か国に徴兵制度が存在しますが、そのうち30か国しか法的な対策を取っていません。そのうちの25か国はヨーロッパ諸国が占めています。ヨーロッパ以外の多くの国、とりわけ戦闘激化地域(イスラエルパレスチナコンゴ)では、現在でも、良心的兵役拒否は死刑など、厳罰となります。


 冷戦下のヨーロッパで、西側諸国での良心的兵役拒否者の立場は認められましたが、多くの東側諸国は良心的兵役拒否を認めませんでした。冷戦終結後には、多くの東ヨーロッパ諸国が良心的兵役拒否を認めるようになりました。最近のヨーロッパでは、2003年、セルビア・モンテネグロで、良心的兵役拒否の権利を認めました。


 台湾では、良心的兵役拒否が合法化、制度化されており、介護、医療、消防、警察などの代替役務をこなすことで、兵役を果たしたとみなされるようになっています。


 2008年11月フリー百科辞典ウィキペディア」によると、良心的兵役拒否が合法的に認められ、代替役務が制度化されている国家は、ドイツ、スウェーデンデンマークノルウェー、スイス、台湾、ロシアです。良心的兵役拒否が合法的に認められていないが、代替役務が制度化されている国家が、韓国です。


 韓国ではこれまで50年にわたり、エホバの証人は兵役拒否のために刑務所に入れられてきました。投獄の結果亡くなった兄弟も5人います。毎月70人ほどのエホバの証人の兄弟たちが刑務所に送られています。かつて韓国での兵役拒否者は、エホバの証人に限られていましたが、2002年2月に30の市民団体で構成された「良心的兵役拒否権と代替服務制のための連帯会議」が結成されています。


 西アジアアルメニアでは、2007年の半ばまでに71人の若いエホバの証人が最高3年の刑に服しています。


 現在ドイツでは、良心を理由に兵役は拒否できることが法律で定められており、その代わり13ヶ月の社会福祉活動が義務付けられています。同国では、良心的兵役拒否者の数が西暦2003年には兵役につく者の数を上回り、老人介護などの社会福祉事業はこれらの「民間奉仕義務」なしには成立し得ないと言われ、徴収兵と同様代替労役も社会貢献をしていると解釈されています。


 国によっては、聖書の教えに従うことが命まで犠牲にすることを意味する場合もあるようです。しかし、ある国々では、兵役の代替業務が法的に制定され、良心的兵役拒否を行なうことが容易になっている国もあるようです。クリスチャンは、この事物の体制で命を永らえることを過度に求めるのではなく、永遠の命と復活の希望のために今の命を犠牲とする事も必要な場合があるでしょう。


 しかしながら、イエスはある都市で迫害されたなら、別の都市に逃げるようにと助言されました。(マタイ10:23)こうした助言を考えると、兵役を強制されたなら、国外に逃げざるを得ないと考えるかもしれません。ひとりひとりが聖書の助言を考慮して決定することができます。


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