列王第一19章・神がエリヤに与えた任務はどうなったのか

「あなたは入って行き,ハザエルに油をそそいでシリアの王としなければならない。また,ニムシの孫エヒウに油をそそいでイスラエルの王とし,アベル・メホラの出身のシャファトの子エリシャに油をそそいで,あなたに代わる預言者とすべきである。そして必ずや,ハザエルの剣を逃れる者をエヒウが殺し,エヒウの剣を逃れる者をエリシャが殺すのである。」(列王第一19:15〜17) 

 
 エホバは、バアル崇拝との戦いに疲れたエリヤをホレブ山に呼び寄せ、任務を与えました。冒頭の聖句のようにハザエルとエヒウを王として油をそそぎ、エリシャをエリヤに代わる預言者とするという任務でした。


 聖書を調べてみると、確かに、エリヤはエリシャを自分に代わる預言者としていますが、エリヤがハザエルとエヒウを王として油を注いだという記録はありません。エリヤは、自分の任務に怠慢だったのでしょうか。エリヤは、バアル崇拝との戦いに疲れて行動しなかったのでしょうか。


 聖書の記録をよく調べてみると、それはエリヤの怠慢ではなかったことが分かります。人間の自由意志の行使に対するエホバの対応の表われでした。
 

 後になってアハブは、罪のないナボテを殺してそのぶどう園を奪うという罪を犯します。エリヤは、自分の命を危険にさらしていたアハブの前に勇気をもって現れ、アハブに対するエホバの裁きの言葉を伝えます。その裁きの言葉の中には、だれでも壁に向かって放尿する者、すなわち男子すべてをアハブの家から断ち滅ぼすということが含まれていました。(列王第一21:21,22)
 

 エリヤは命を危険にさらしても厳しい音信をアハブに伝えたのですから、バアル崇拝者に対する戦いを緩めてはいなかったこと、自分の務めに怠慢でなかったことが分かります。
 

 ところが、アハブはエリヤを通して与えられたエホバの言葉を聞いて悲しみへりくだりました。彼は断食を続け、粗布を着て横たわり、悄然として歩きました。(列王第一21:27)そこでエホバはアハブのへりくだりのゆえに、アハブに憐れみを示されました。エホバはアハブのへりくだりのゆえに、アハブの生きている時代には、災いをもたらさないこと、彼の子の時代に災いをもたらすことにすると言われました。(列王第一21:29)
 

 エホバはアハブのへりくだりに応じられました。それに伴ってハザエルをシリアの王として、エヒウをイスラエルの王として油をそそぐ、つまり任命する業は延期されることになりました。なぜなら。ハザエルとエヒウは、王として任命されるとすぐ、バアル崇拝者のアハブの家と戦いアハブの家に災いをもたらすことになるからです。それで、ハザエルとエヒウに油をそそぐ業は、エリヤが代表的な預言者として活動している間には、行なわれませんでした。その業は、後になってエリヤの後継者のエリシャによって行なわれることになりました。
 

 エリシャがダマスカスに行くと、ハザエルは、シリアの王から遣わされて自分からエリシャのもとにやってきました。エリシャは、ハザエルに彼がシリアの王になるというエホバの言葉を告げました。(列王第二8:13)ハザエルはシリアの王となった後、イスラエルと戦い、アハブの子エホラムと戦い、エホラムを討ち倒し傷つけました。


 その後、エリシャは従者を用いてエヒウをイスラエルの王として油注ぎました。(列王第二9:1〜3,6〜10)油注がれたエヒウは即座に行動を起こし、エホラムを始めとしてアハブの家の者たちに対して徹底的にエホバの裁きを執行しました。エヒウはアハブの家の者たち、バアル崇拝者たちを滅ぼし尽くしました。(列王第二10:17,28)それで、エホバの言葉の通り、「ハザエルの剣を逃れる者をエヒウが殺(す)」ことになりました。(列王第一19:17)


 こうしたことから、エホバの裁きの言葉は、融通性のないものではなく、アハブのへりくだりのため、執行される時が遅くなったことが分かります。


 現代の預言的実体に対するエホバの裁きの言葉も、同様でしょう。それらの実体に属する人々の自由意志による行動によってエホバは柔軟に対応され、裁きの時は変更されるということが分かります。


 たとえば、大いなるバビロンに対するエホバの裁きの言葉があるとしても、大いなるバビロンの実体となる政治支配者は、今回日本の地震津波原発事故という災害において救援活動を大いに行いました。大いなるバビロンがそのような良いことを行なうならば、それに応じて大患難の時は遅くなることでしょう。私たちはいつも、エホバの言葉の前にへりくだって良いことを行なうべきです。


出エジプト16章・荒野での奇跡は世界の貧困の解決をさし示す
http://blog.livedoor.jp/littleyohane/archives/51731353.html#trackback


歴代第二12章・エホバはレハベアムのへりくだりに応じられる
http://blog.livedoor.jp/littleyohane/archives/51632273.html#trackback