子どもに対する性的いたずらの危険と対策

以下の記事は、目ざめよ!1993年10月8日号「お子さんは危険にさらされています!」からの抜粋です。

お子さんは危険にさらされています!(省略)


急を要する問題


子供に対する性的暴行は多くの場合,闇から闇に葬られます。そのため,届け出の最も少ない犯罪ではないかと言われているほどです。それでも,この種の犯罪は確かに,過去数十年にわたって増え続けてきました。米国でロサンゼルス・タイムズ紙がこの問題に関する調査を行なったところ,女性の27%,男性の16%が子供の時に性的虐待を受けていたことが分かりました。これはショッキングな数字ですが,米国に関する他の綿密な推定ではそれよりも相当高くなっています。
(省略)


かつて犠牲となった人の多くは,自分には価値がないという根深い感情や自尊心の低下に悩まされます。この分野の専門家たちは,犠牲となった少女に後に現われる一般的な影響として,家出,麻薬やアルコールの乱用,うつ病,自殺未遂,非行,乱交,睡眠障害学習障害などを挙げています。長期に及ぶ影響には,育児下手,不感症,男性不信,小児性愛者との結婚,レスビアン,売春,子供への性的いたずらの加害者になることが含まれます。


これらの影響は後で犠牲者に必ず現われるわけではなく,過去に受けた性的暴行だけを理由に自分の悪行の言い訳ができるわけでもありません。虐待されたからといって,犠牲者が不道徳や非行を犯すよう運命づけられることはなく,後の人生で選択する事柄について個人的な責任が全くなくなることもありません。しかし,犠牲者が経験するこうした一般的な結果は確かに危険です。それゆえにこそ,「どうすれば子供を性的いたずらから守れるだろうか」という質問は緊急性を増しています。


どうすれば子供を守れるか


「だれにも言っちゃいけないよ。二人だけの秘密だからね」。
「だれも信じてくれないよ」。
「話すと,お父さんやお母さんに嫌われるよ。悪いのはおまえだということが分かるんだから」。
「特別のお友達でいるのはもういやなの?」
「わたしが牢屋に入ることになってもいいのかい?」
「話したら,お父さんとお母さんを殺すからね」。


子供を利用して倒錯した性欲を満たし,子供から安心感と潔白感を奪った後,虐待者は犠牲者にさらに別のもの,つまり沈黙を要求します。確実に沈黙させるため,彼らは,恥ずかしい思いをさせたり,秘密にさせたり,さらにはあからさまに脅したりします。こうして子供は,虐待に立ち向かう最大の武器,つまり人に話し,はっきり言葉に出して大人に保護を求めようとする意志を奪われてしまうのです。


お子さんを教育しましょう


賢いソロモン王は息子に,知識と知恵と思考力が「悪い道から,ゆがんだ事柄を話す者から」の身の守りになると話しました。(箴言 2:10‐12)


子供はまさにそれを必要としているのではないでしょうか。FBIのパンフレット「子供に対する性的いたずら―その行動分析」には,「格好のえじき」という見出しの下に,「ほとんどの子供にとって,性はタブーである。特に親からは,正しい情報をほとんど何も教えられていない」と書かれています。お子さんを「格好のえじき」にしてはなりません。性について教育してください。 例えば,思春期に体がどう変化するかを知らないまま,その時期を迎えさせてはなりません。知らなければ,混乱して恥ずかしい思いをし,その結果,えじきになりやすくなります。










ある女性は子供の時に性的虐待を受け,何年も後に,二人の我が子も性的虐待を受けました。彼女をジャネットと呼ぶことにしましょう。ジャネットはこう述懐しています。「性を一度も話題にせずに育ちました。そのため,性にどぎまぎする大人になりました。性は恥ずかしいことでした。子供ができてからも同じでした。よその子供には話せても,我が子には話せないのです。あるべき姿ではないと思います。こうしたことについて話してやらないと子供は攻撃の的になりやすいからです」。


虐待を防ぐ方法を早くから教えることができます。子供に体の各部の名前,例えば膣,乳房,肛門,陰茎などを教える時には,それらは良いものまた特別なものではあるけれども,プライベートなものだということを話してください。「ほかの人は,パパやママでも触ってはいけないんだよ。お医者さんでも,パパかママがそばにいる時や,『いいですよ』って言った時でないと触ってはいけないんだよ」。 できれば両親もしくは成人した保護者各人から許可を得るほうが望ましいと言えます。


シェリル・クレーザーが「セーフ・チャイルド・ブック」で述べているように,子供はためらうことなく虐待者を無視し,悲鳴を上げ,逃げ出すべきなのに,虐待された子供の多くは,行儀の悪い子供と思われたくなかったと後で言います。


ですから子供は,大人の中には悪い事をする人もいること,また悪い事をさせようとする人に従う義務は子供であっても全くないということを知っている必要があります。そのような場合,子供にははっきり断わる完全な権利があります。


多くの人が勧める教え方の一つに,「もしも……?」ゲームがあります。例えばこう尋ねます。「もしも先生からほかの子を殴るように言われたら,どうする?」「もしも(ママ,パパ,牧師さん,お巡りさん)が高いビルから飛び降りなさいと言ったら,どうする?」 子供の答えは見当違いだったり全く間違っていたりするかもしれませんが,強い口調で訂正してはなりません。このゲームでは,子供を驚かせたりおびえさせたりする必要はないのです。事実,専門家たちはこのゲームを,優しく,愛情深く,その上楽しく行なうことを勧めています。


次に,不適切な,あるいは不快感を与える愛情表現を払いのけるよう子供に教えてください。例えばこう尋ねます。「もしもパパとママの友達からキスされそうになって,変だなと思ったら,どうする?」 たいてい,どうするつもりかを子供に実際に演じさせて,“つもりごっこ”のようにするのが最善です。
同じようにして子供は,虐待者の他の手口に抵抗する方法も身に着けることができます。例えば,「もしもだれかに,『◯◯ちゃんのこと大好きだから,お友達になろうよ』って言われたらどうする?」と尋ねることができます。子供がそのような策略に抵抗する方法を学んだら,他の策略についても話し合います。


このような具合にです。「だれかに,『わたしをがっかりさせたくないよね?』って言われたら,何て言う?」 言葉と,はっきり分かる確固とした身振りで断わる方法を子供に教えてください。虐待者はたいてい巧妙に近づき,子供がどう反応するかを試すということを覚えておきましょう。それで子供には,断固として抵抗し,「言いつけちゃうよ」と言うように教えなければなりません。

訓練を中途半端なまま終わらせない


そのような訓練を一回の話し合いで終わらせてはなりません。子供には何度も繰り返す必要があります。どれほど具体的に訓練するかを決めるのはあなたです。とはいえ,中途半端なまま終わらせてはなりません。


例えば,ひそかな合意を得ようとする虐待者の試みを未然に確実に防いでください。親に隠し事をするよう大人が子供に求めるのは絶対に正しくないということを子供は知っているべきです。親に話すのはいつでも―たとえ話さないと約束してしまった場合でも―正しいことだと言って安心させましょう。(民数記 30:12,16と比較してください。)


ある虐待者は,子供が家庭内の何かの決まりを破ったことを知ると,子供を恐喝します。「そっちが言いつけないなら,こっちも言いつけない」というわけです。ですから子供は,そのような状況下でも話したためにしかられることは決してないということを知っているべきです。話したために厄介なことになったりはしないのです。


脅しに負けないようにも訓練しなければなりません。子供の前で小さな動物を殺して見せて,おまえの親にも同じ事をしてやるぞと脅す虐待者がいます。弟や妹を虐待すると言って脅す虐待者もいます。ですから,どんなに怖い脅しを受けても必ず虐待者のことを話すよう子供に教えてください。


この点で,教える際に聖書が役に立ちます。聖書はエホバの全能の力を生き生きと強調しているので,虐待者の脅しの効果を弱めることができます。エホバにはどんな脅しもものともせずにご自分の民を助ける能力があることを子供は知っているべきです。(ダニエル 3:8‐30)


エホバの愛する人々を悪い人たちが傷つけたとしても,エホバはいつでも,受けた傷をいやし,物事をより良い状態に戻すことがおできになります。(ヨブ 1,2章; 42:10‐17。イザヤ 65:17)エホバはすべてを見ておられ,悪いことをする人たちのことも,それに抵抗しようと精一杯努力する善良な人々のこともご存じであると子供に確信させてください。―ヘブライ 4:13と比較してください。


[脚注]


もちろん子供が非常に幼いころは,親がお風呂に入れたり着替えさせたりしなければならず,そのような時には親が性器を洗ってやります。とはいえ,早いうちに子供に体の洗い方を教えましょう。保育の専門家の中には,可能なら3歳までに自分で性器を洗えるようにさせることを勧める人もいます。


キスや抱擁といった愛情の表現を求める人すべてにそうするよう子供に強制していると,この訓練が意味をなさなくなると注意する専門家もいます。そのため,したくないことを要求された時には,丁寧に断わるか,何かほかの方法を取るよう子供に教えている親もいます。


助けを求めて叫んだ少年

「エホバへの叫び,少年を性的いたずらから守る」という見出しが1993年5月5日付の米国の新聞「アリゾナ・リパブリック」に掲載されました。この事件で性的いたずらの容疑をかけられている男は銃を突きつけて13歳の少年を誘拐し,自分のアパートに連れ込みました。若者が「エホバ,助けて!」と叫ぶと,男は狼狽して少年を解放しました。その後,男は警察に逮捕されました。


そのような状況下でエホバのみ名を呼び求めることがふさわしいのは確かですが,現在の危機的な「終わりの日」に神の僕が被害者にならずにすむわけではありません。(テモテ第二 3:1‐5,13)ですからクリスチャンの親は,見た目がどんなに立派でも,見知らぬ人には必ず注意を払うよう子供を訓練しなければなりません。



ヨブ39章・神が悟りを分け与えなかっただちょう


近親相姦の傷跡を癒す―神は理解して助けてくださる