ヨブ8章・先祖の教えに頼ってヨブを苦しめたビルダド

「実際、どうか先の代の人々に尋ね。その父たちにより探求されたことにあなたの注意を向けよ。」(ヨブ8:8)


 何かの教訓を語ろうとして、先祖の教えを引用する人がいます。先祖の教えは正しいでしょうか。それは、真実ですか。ヨブにとって慰めとなりましたか。調べてみましょう。


 ビルダドは、エリパズ、ツォファルと共に、ヨブが災いにあったことを聞き、ヨブを慰めるためにやってきたヨブの三人の友の一人でした。(ヨブ2:11)ヨブは、サタンの攻撃によって、全財産と十人の子供とを失い、体中病気に蝕まれていました。三人の友は、ヨブの苦しみの原因を知りませんでした。そのために、三人の友の言葉は、ヨブを慰めるものとはなりませんでした。


 ビルダドはエリパズの後に発言します。ヨブ8章はビルダドの最初の発言となっています。そこで、ビルダドはヨブに冒頭の聖句のように、先祖の教えに頼るように勧めます。


 ビルダドは、なぜ先祖の教えに注意を向けるようにと述べたのでしょうか。ビルダドは、「わたしたちはただ昨日からの者に過ぎず、何も知らないからだ。わたしたちの地上の日々は影だからである。」と述べて、現在の命の短い自分たちが何も知らないことを述べます。(ヨブ8:9)それゆえに、ビルダドは、先祖の教えに頼るように勧めました。ビルダドの論議は一見して、理にかなっているように見えます。


 しかし、先祖の教えに頼ったビルダドの論議も悪霊から影響を受けていたエリパズの論議とさほど変わりませんでした。ビルダドは世の中で起きていることがすべて神が行なわれたことだと論じました。


 ビルダドは、こう論じました。神は裁きを曲げず、義を曲げない。(ヨブ8:3)「神を忘れる者」、「背教者」の道は、「滅びうせてしまう。」(ヨブ8:13)神は、とがめのない者を退けることはなく、悪行者を支持することもない。(ヨブ8:20)邪悪な者の天幕はなくなってしまう。(ヨブ8:22)もし、ヨブが神を捜し求め、恵みを請うていたなら、今ごろは、神がヨブに義の住まいを回復されていたであろう、と論じました。(ヨブ8:5,6)一見して、ビルダドの言葉は正しいように見えます。


 ビルダドは、エリパズが示唆したように、ヨブが邪悪な者であり、神を忘れる者、背教者であることを示唆していました。ヨブが災いを経験したのは、ヨブが邪悪な者であるからであり、ヨブに対して神の裁きが下ったのであり、それはヨブに対する神の正当な扱いであり、ヨブは神の前に悔い改めるべきだと論じました。ビルダドは、ヨブは、悪行者であるゆえに、ヨブに災いが下っているに違いないと決め付けました。


 しかし、神はヨブを邪悪な者であるとして、ヨブに罰を与えることはされませんでした。ヨブが、神を恐れる者だったので、ヨブの忠誠を試みるために、サタンがヨブに災いをもたらすことを神は許されたのでした。(ヨブ1:1,8)ビルダドの言葉は、少しもヨブを慰めるものになりませんでしたし、真理でもありませんでした。


 聖書は義なる人も災いを経験することがあることを述べています。例えば、箴言24章16節では、「義なる者はたとえ七度倒れても,必ず立ち上がるからである。」と述べており、義なる者が七度倒れることがあることを述べています。詩編34編19節でも、「義なる者の[遭う]災いは多い。しかし,エホバはそのすべてから彼を救い出してくださる。」とあり、義なる者が災いを経験することに言及しています。ですから、災いを経験しているからといって、その人を邪悪な人であると決め付けることは決してできません。


 ビルダドは、エリパズと同じように、エホバに関して真実なことを語らなかったとして、エホバの怒りを買いました。(ヨブ42:7,8)ビルダドは、罪の許しのためにエホバに焼燔の犠牲を捧げなければなりませんでした。


 ビルダドのエホバに関する推論は間違っていました。それで、たとえば、今回東日本の人々が地震津波の災害を経験したのは、神が災いをもたらしたわけでもなく、被災地の人々が神の怒りを買っているわけでもありません。そのように考えるならば、私たちはビルダドのように全く神について間違った考えを持つことになります。また、神が災いをもたらしたと神を恨むようになるでしょう。そうするのは、間違っています。


 ビルダドがそのような間違った論議をしたのはなぜだったでしょうか。ビルダドは先祖の教えに頼っていました。先祖の教え、つまりそれは、人間の教えであり、伝統でした。イエスは、次のように神の言葉と調和しない伝統を非難されました。


 「彼らがわたしを崇拝しつづけるのは無駄なことである。彼らは,教理として人間の命令を教えるからである。あなた方は神のおきてを捨て置いて,人間の伝統を堅く守っているのです。」(マルコ7:7,8)


 ですから、先祖の賢人の言葉は、一見して知恵の言葉のように見えることもありますが、やはり神の言葉や真実と調和していないことがありますから、気をつけなければならないことが分かります。私たちは、自分の信じていることや考え方が、神の言葉や真実と調和しているか慎重に吟味しましょう。



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