ヨブ15章・ヨブの友エリパズの間違った論議
「邪悪な者は一生の間、もだえ苦しんでいる。実際、圧制者のために取って置かれた年の数だけ。」（ヨブ15:20）
ヨブの友エリパズはヨブを慰めるためにやって来たのですが、ヨブに対して、間違った論議を繰り返しました。エリパズはどのように論じたのでしょうか。
ヨブは、悪魔サタンの攻撃により、全財産を失い、十人の子供を殺されてしまいました。その上、ヨブはサタンに打たれて全身悪性のはれものができました。そのような災いにあったヨブを慰めるためにヨブの三人の友はやってきました。ヨブと三人の友は、ヨブの苦しみの原因をめぐって順番に語りました。
ヨブの三人の友の一人、エリパズは、一回目の話の中で、霊から音信を受けたことを言い表しています。（ヨブ4:12，15）エリパズが霊から音信を受けた時、病的な恐れだけを感じていること、他の霊感を受けた神の言葉と調和していないことからして、彼が悪霊から音信を受けたということが分かります。
ヨブ15章は、エリパズの二回目の発言となっています。エリパズの二回目の論議を調べてみると、やはり一回目の自分の論議を繰り返しており、他の霊感を受けた神の言葉と調和していません。
たとえば、エリパズは、「死すべき人間はどうして清かろうか。あるいは、女から生まれた者は正しかろうか。見よ、ご自分の聖なる者たちをも神は信じておらず、実際、天もその目には清くない。」と言っています。（ヨブ15:14，15）エリパズは、神の目に人間が正しくあることや清くあることはできないと述べています。エリパズの言葉によると、人間は、神から信頼されたり、神の前に是認された立場を取ることができません。
しかし、詩編73編1節には、神は、「心の清い者たちに対して，確かに善良であられる。」と述べられており、神の目にある人々が心の清い者とみなされることを述べています。（テトス1：15）また、イザヤ45章25節には、「イスラエルの胤は皆エホバにあって正しい者とされ，自分たちのことを誇るであろう。」とあり、やはり、神の目に正しい者が存在し得ることが述べられています。
また、啓示の書には、神が聖なる者たちの忠誠に報いて、彼らが「聖なる者たちの義の行為を表わす」上等の亜麻布で装うことが述べられています。（啓示19：8）明らかにエホバはご自分の聖なる者たちを義なる者とみなされ、信頼されます。
また、詩編20編6節には、「聖なる天」という言葉があります。天は神の目に清く神聖です。ですから、ヨブ15章14，15節のエリパズの言葉は、他の神の霊感を受けた言葉に調和していません。
それで、後ほど、エリパズはエホバについて真実なことを語らなかったとしてエホバから叱責されました。（ヨブ42：7）
さらに、エリパズは、「邪悪な者は一生の間、もだえ苦しんでいる。・・・平安のときにも、奪い取る者が彼を襲う。・・・彼は剣のために取って置かれる。彼はパンを求めてさまよい歩いている。・・・苦難と苦もんが彼をしきりにおびえさせる。・・・これは彼が神に逆らって手を差し伸べ、全能者以上に自分が勝っていることを示そうとするからだ。それはうなじをこわくして神にはせ向かうからだ。・・・彼は富まず、その富はかさむことがなく、彼はその取得物を地の上に広げることもない。」と述べました。（ヨブ15：23〜26，29）
エリパズは一貫して、邪悪な者は、神に逆らうために、災いと苦しみを経験し、この世で裕福で安定した暮らしを楽しむことはないと述べました。そのようにして、エリパズは、ヨブが災いで苦しんでいるのは、ヨブが邪悪な者で神に逆らっているからだということを示唆しました。
しかし、エリパズの論議は間違っていました。イエスは、感謝しない邪悪な者に対しても、神が親切であられ、彼らが物質的祝福を享受することを許されると述べておられます。（ルカ6：35。マタイ5：45）また、エレミヤも邪悪な者が「大いなる者となって富を得る」ことを述べています。（エレミヤ5：26，27）それで、神に信仰を持つ者も邪悪な者も神からの恵みを享受することができます。
それで、エリパズの二回目の論議は、聖書の他の部分の記述と調和していませんから、真実ではありませんでした。私たちは、誰か他の人が苦しんでいるのを見聞きする時、単純にその人が邪悪であるので、苦しみを経験していると言ってその人を邪悪だと決め付けないようにしましょう。
例えば人々が災害に遭っている時に、それはその人々が邪悪であるせいだと考えたり、言ったりしないようにしましょう。また、私たちは人間が神から是認された親しい関係を持てることを疑わないようにしましょう。
私たちは、語る時、聖書の音信と調和したことを語るようにしましょう。そのようにして聞く人たちに恵みとなるようにしましょう。（エフェソス4：29）とりわけ、エホバについて間違ったことを言わないように気をつけましょう。
