ヨハネ11章・ユダヤの指導者はローマを恐れイエスを処刑する

「祭司長とパリサイ人たちは・・・こう言いはじめた。『この人が多くのしるしを行なうのだが,我々はどうすべきだろうか。彼をこのままほっておけば,みんなが彼に信仰を持つだろう。そして,ローマ人たちがやって来て,我々の場所も国民も奪い去ってしまうだろう。』」(ヨハネ11:47,48)


エスがラザロを復活させるという奇跡を行なった後に、ユダヤ人の宗教指導者の祭司長とパリサイ人たちはサンヘドリンを召集して、上記のように論じました。彼らはイエスが奇跡を行なったことは認めざるを得ませんでしたが、それでも、イエスのためにローマから攻撃されることを恐れました。そして、イエスの奇跡の背後に全能の神がおられるという重要な事実を見落としました。


当時、ユダヤでは、すでにダビデの王統の王が支配しなくなって久しくなっていました。イエスが生きていた時代は、ユダヤはローマのティベリウス皇帝の支配下にありました。そして、ピラトがローマ政府の代表者としてユダヤの総督となっていました。さらに、ガリラヤの地域は名目上はユダヤ人でしたが実際にはエドム人のヘロデが、王として支配していました。(ルカ3:1)


ユダヤは、カエサレアに官邸のあるローマの総督の管轄下に置かれていました。(使徒23:23,24)西暦66年のユダヤ人の反抗に至るまで,おおむねローマの総督たちがユダヤの政務を管理しました。


ですから、ユダヤはローマの支配下にありましたが、祭司長とパリサイ人たちは、ユダヤ人たちがみんなイエスに信仰を持つならば、ローマに敵対する一大政治勢力になってロ−マ人が攻めて来て土地も国民全体も奪い去ってしまうだろうと考えたようです。


そのためイエスを殺す決定は国民全体の益になると考えました。それで、イエスを捕えて杭につけて殺してしまいました。イエスは人類のために贖いの犠牲の死を遂げなければならなかったので、彼らの行動は、神のご意志の遂行に貢献しました。それでも、彼らの推論は正しいものだったでしょうか。


彼らの判断は間違っていました。イエスは「カエサルのものはカエサルに、しかし神のものは神に返しなさい」と言われ、ローマのカエサルに服して、税を払うようにと言われていました。(マルコ12:17)その当時、すでにローマが上位の権威になっていました。(ローマ13:1)ですから、イエスはローマに服するようにと言っておられました。それで、イエスは実際はイスラエル人がロ−マと平和な関係を持つ影響力になっていました。



DrusMAX(Tiberius)ティベリウスの銘刻のある硬貨
エスはローマのカエサルに税を払うように勧めてローマと良い関係を保つ助けになっていた
しかしサンヘドリンはイエスの存在は国家の安全を脅かすと考え間違った判断をした


けれども、実際はユダヤ人はイエスを殺してしまったので、ローマに服することを促す勢力がなくなりました。さらに、神の子イエスを殺したために、神の是認と保護を失いました。そしてユダヤ人は自らロ−マに反抗して、西暦70年にロ−マ軍が攻めて来てユダヤ国民全体が滅ぼされてしまうという結果になりました。


そのために、エホバ神の神殿は破壊されて、二度とエルサレムに再建されることなく、ユダヤは神の選ばれた民という立場を失ってしまいました。


それで、イエスを裁いたユダヤ教の指導者たちは人間的な見方で判断して、大きな間違いをしたということが分かります。彼らの判断は事実に基づいてもいませんでした。


とりわけ政治や行政の分野で物事を決定する立場にある人々は、物事を決定するためには、事実を慎重に考慮する方が良い結果をもたらせます。また、過度に恐れに動かされて判断を下すのではなく、国家として神との関係を損なわない決定をするのが最善の結果をもたらせます。


現代の神の民も外国と戦争をするのではなく、平和な関係を保つ影響力を及ぼします。それで、神の民を保護する決定を下す方が、国家にとって益になるはずです。