ダニエル11章・現代の北の王と南の王に関する預言(1)

 ダニエル11章には、古代ペルシャの時代から、現代に至るまでの北の王と南の王の抗争に関する預言があります。私は、預言はイエス・キリストの贖いの犠牲について言及して後、終わりの時に飛んでいると考えているのですが、今回、そのように解釈した場合、現代に関する預言の解釈を試みたいと思います。


 この預言の解釈は、聖書の他の部分を読み進めていくに伴って変更を加えるかもしれないことをご承知おきください。一応、預言の解釈の粗筋を述べてみたいと思います。


 私はダニエル11章22節には、「契約の指導者」が登場します。イエスは「指導者はキリスト一人」であると言われたので、契約の指導者とは、イエス・キリストのことだと思います。(マタイ23:10)また、「キリストは新しい契約の仲介者」なので、契約とは新しい契約のことだと思います。(ヘブライ9:15)イエスは、「砕かれ」ます。(ダニエル11:22)


 私は続く23節に登場する「彼」は北の王だと思います。(ダニエル11:23)なぜなら、その節では、彼は「小さな国民によって強大なものとなり」ます。ダニエル8章でも、北の王についての説明がありますが、その24節で、「その者の力は必ず強大になるが、それは自らの力によるのではない」と述べられています。(ダニエル8:24)ですから、ダニエル11章23節と8章24節の説明は調和しています。


 小さな国民とは何を意味するのでしょうか。神の王国の成員を意味するのでしょうか。(イザヤ60:22)どこか特定の国民を意味するのでしょうか。判断がつきません。


 そして、ダニエル8章24節の預言は、8章23節によると、「彼らの王国の末期」に北の王が立ち上がった時に成就します。このことは、ダニエル11章23節以降を終わりの時に成就すると考えてよい聖書的根拠となるかもしれません。つまり、小さな国民によって北の王が強大になる時は、終わりの時に入っていると考えていいでしょう。


 ダニエル11章の解釈を続けます。24節によると、北の王は「管轄地域の肥えたところに入り」ます。(ダニエル11:24)そして、「強奪物と分捕り物と貨財」を散らします。 「バビロンの管轄地域」という言葉があります。(ダニエル2:48,49)ですから、北の王は、もともと北の王の支配下にある地域のどこかを攻撃して強奪を行うようです。すなわち、北の王は、イスラム圏のどこかの富んだ国を攻撃して所有物を強奪するようです。


そして、その後、経済的な力を蓄えた北の王は、25節によると南の王に対して、「大きな軍勢を率い」て攻撃をしかけます。(ダニエル11:25)北の王は、通常兵器を用いた人海戦術によるアメリカ本土の攻撃という戦略をとるようです。なぜなら、北の王は「大量の貨財を携えて」自国に「戻る」からです。(ダニエル11:25,28) もし、大量破壊兵器を使っていれば、汚染されたり破壊されたりして、大量の貨財を手に入れることはできないでしょう。(ダニエル11:28)




South African Infantry in their glory by National Library of Scotland (manysoldiers)
北の王は通常兵器を用いて大きな軍勢を率いて南の王を攻撃することが預言されています




 南の王も北の王に立ち向かいますが、南の王に対してたくらみが巡らされて、南の王は崩壊します。また南の王の軍勢の多くの者が打ち殺されて倒れることになっています。(ダニエル11:26)そして、二人の王は、一つの食卓について偽りを語ります。(ダニエル11:27)どうも和平交渉をするようです。


 一度目の北の王の攻撃は北の王の勝利に終わります。そして、北の王は、聖なる契約に逆らうと預言されています。(ダニエル11:28)聖なる契約とは「新しい契約」のことでしょう。北の王は新しい契約に入っているクリスチャンたちに敵対するのでしょう。


 そして、北の王は二度目に「南に向かって」「攻め寄せ」ます。しかし、今回は先回とは違ってうまくいかないようです。(ダニエル11:29)北の王に向かって「キッテムの船」が攻め寄せます。そのため、北の王は失意する結果になります。(ダニエル11:30)


 私は最初に解釈した時には、この「キッテムの船」とは、アメリカの海軍を意味していると解釈しました。なぜなら、キッテムの船とは、ヘブライ語マソラ本文とギリシャ語 セプトゥアギンタ訳では、「ローマ人」となっています。ローマ人は、クリスチャンを迫害しましたし、大いなるバビロンアメリカは、クリスチャンを迫害することになっているからです。(啓示17:6;18:24)それで、キッテムの船とは、ローマ人、つまりアメリカの海軍だと考えました。
 

しかし、再検討した結果、これは二度目の攻撃の時には、中東の諸国家の海軍が、アメリカの側につくことを意味する可能性があると考えるようになりました。今回、なぜそのように解釈したかを説明します。


 この北の王と南の王に関する預言は、ダニエル11章の最初から始まっています。その際、北の王と南の王の場合には、その時代に合わせて実体を判断する必要があります。


 しかし、ダニエル11章で、「ペルシャ」、「ギリシャ」のような固有名詞が出てくる場合は、それは象徴的な表現ではなく、文字通りのペルシャギリシャです。(ダニエル11:2)それで、固有名詞が出てくる場合、できうる限り、文字通りの意味で判断しても構わないということになります。


 そして、「キッテム」とは、現代の権威者は、キプロスであると考えています。しかし、聖書は「キッテムの島々」またキッテムの「海沿いの地帯」、キッテムの「沿岸」という言葉を使っており、キッテムという時、キプロス周辺の他の島々や沿岸の国々を含むことがあります。(民数記24:24。エゼキエル 27:6。エレミヤ 2:10)


 キプロス周辺の沿岸の国々とは地図を見てみると、ギリシャ、トルコ、シリア、レバノン、ヨルダン、イスラエルリビアなどです。ですから、中東は、南の王を攻撃する点において分裂して、一部の国々が南の王に味方して、南の王が敗北を免れるということになるのかもしれません。




(cyprus)Gabriel Flores Romero Middle east & North Africa Geography
キプロス島周辺の沿岸の国々を確認してください

 

キッテムの船がどこの国々の海軍になるのかは、事態の進展を見てみなければ分からないでしょう。


 啓示の書には、世界中の国が、南の王を崇拝することを預言しています。(啓示13:3,4,7,8)そして、北の王は南の王を高めて野獣の像を設立することになっています。(啓示13:12,14)ですから、大患難の直前まで、中東の一部の国々が南の王の側につくのは予想されることです。


しかし、「キッテムの船」という言葉も象徴的な意味と考えていい可能性もあります。なぜなら、ダニエル11章には象徴的な意味に解釈するしかない言葉もあるからです。例えば、ダニエル11章41節の「エドム」「モアブ」「アンモン」などの国家はもうすでに滅びてしまっていて存在していないので象徴的な意味に解釈するしかありません。


 「キッテムの船」については、さらに検討してみたいと思います。


キッテムについては、民数記24章の中で、預言者バラムが言及しています。「キッテムの沿岸からの船が来る。それは必ずアッシリアを悩ます。まさしくエベルを悩ます。しかし彼もついには滅びる。」(民数記24:24)


そして、このエベルはマソラ本文、七十人訳サマリア五書などは、ヘブライ人と訳しています。もし、このバラムの預言を神の霊感を受けたものとして受け入れ、ダニエル11章を説明するものと考えるのであれば、キッテムの船がヘブライ人を悩ますことになっています。


 ですから、この二度目の北の王と南の王の間の抗争の時には、中東の諸国家が北の王だけでなく、神の民を攻撃するのかもしれません。確かに啓示の書ではどこかの時点で底知れぬ深みから上る野獣が神の民を攻撃することが予告されています。(啓示11:7)このことは、また検討します。


 北の王は、南の王の二度目の攻撃には失敗しますが、その後効果的に行動します。北の王は、聖なる契約をひぼうし、聖なる契約を離れる者たち、つまり天的希望を持つクリスチャンの中で、背教する者たちを厚遇することが預言されています。(ダニエル11:32)北の王に対して盲目的な従順を示す者たちは好遇されることになるのでしょう。(ダニエル11:30)


  さらに、北の王は、聖なる所を汚し、常供のものを除き去ることが預言されています。(ダニエル11:31)それで、北の王は、新しい契約に忠実に従う者たちを迫害し、その迫害は、クリスチャンの定期的な神への犠牲という「常供のもの」をやめさせるまでになるのでしょう。(ダニエル11:31)


 そして、北の王は、「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」を据えることが預言されています。(ダニエル11:31)荒廃をもたらす嫌悪すべきものとは、北の王によって設立される国際的な政治組織です。北の王はその組織によって南の王に対する最後の総攻撃を組織することになるでしょう。(啓示17:13,16)世界中の多くの人々がその組織に絶対的な従順を示すことになるでしょう。(啓示13:8,12)


 エスは、荒廃をもたらす嫌悪すべきものが、「聖なる場所に立っている」のを見たなら、山に逃げ始めなさいと命じられました。(マタイ24:15,16)荒廃をもたらす嫌悪すべきものが神の民を迫害して、神への奉仕をやめさせることは、それが「立ってはならない」「聖なる場所に立っている」ことになるでしょう。(マルコ13:14)


 そのような状況になったならば、大患難すなわち北の王による南の王に対する最終的な総攻撃が近いことを意味しています。三度目の北の王による総攻撃は、北の王や他の王たちが総力を挙げる未曽有の大きな規模になるでしょう。(マタイ24:21)


ですから、北の王が「荒廃をもたらす嫌悪すべきもの」を設立するのを見たら、大患難の戦闘を避けるため、山や野に逃れる必要があります。(マタイ24:15)また、大患難に伴う食糧不足に備えるために山で自給自足の生活を始める必要があります。(ルカ21:23)



by joaquinuy(mountain23)
北の王が国際組織を設立したら大患難が近づいているので山に逃げる必要があります



  今回ダニエル11章22節から11章31節まで、預言の解釈を試みました。この解釈は、啓示の書や他の預言書の理解が深まると共に、調整される可能性があります。ダニエルの預言のこの部分は、時系列順になっていると思います。次回は、ダニエル11章32節以降の解釈を試みてみたいと思います。