病気と上手に付き合う(1)―病気について知った時

初めて自分の病気について知ったならば、さまざまな感情がわき上がってくることでしょう。どうすればよいのでしょうか。
「病気のために何かを失うと,死に直面したかのようにも感じる」と,キティー・スタイン博士は述べています。ですから,健康という,自分にとって大切なものを失った時には,さながら愛する家族を亡くした時のように,ある程度の期間泣いたり悲しんだりするのも極めて正常なことです。実際,失ったものは健康だけではないかもしれません。


ある女性はこう説明しています。「わたしは仕事を辞めなければなりませんでした。……それまではずっと自立した生活を送っていましたが,それも断念しなければなりませんでした」。他にも、クラシックのバレリーナになるという目標や、好きな時にお店に行って買い物をするといった現実的な事をあきらめなければならなくなるかもしれません。それを悲しむのは当然のことです。


しかし、失ったものに対する釣り合いの取れた見方を保ってください。自らも多発性硬化症を患っているスタイン博士は,こう付け加えています。「失ったもののことを嘆くのは当然だとしても,まだ残っているもののことも理解する必要がある」。確かに,ひとたび最初の涙を切り抜けると,まだ損なわれていない大切なものがあることに気づくでしょう。その一つとして,状況に対する適応力があります。


船乗りは,嵐を静めることはできませんが,船の帆を調節することによって嵐を切り抜けることはできます。同様にあなたも,生活に入り込んできた病気を制圧することはできないとしても,「帆」を調節する,つまり自分の身体的,精神的,感情的な面を適応させることによって病気に対処することはできます。治りにくい病気を抱えている人たちにとって,どんなことがこの点で役に立ったでしょうか。


自分の病気について知る

診断を聞いた当初の衝撃が和らぐと,たいていの人は,辛くても真実を知るほうが,漠然とした恐れを抱えているよりましだと思うようになります。恐れにとらわれると身動きが取れなくなりがちですが,自分に起きていることを知っていれば,何ができるかを考えられるようになります。そのこと自体がプラスの効果をもたらすことも少なくありません。


自分の状態についてさらに詳しく知るべきだと感じるかもしれません。聖書の箴言に,「知識のある人は力を強化している」とあります。(箴言 24:5)無知であるより、知識がある方が物事に前向きに賢明に対処できるのです。


「図書館から本を借ります。自分の病気についてできるだけ多くのことを学ぶのです」と,ある寝たきりの男性はアドバイスしています。また、インターネットで自分の病気について情報や治療法を検索できます。





図書館で情報を集めましょう



そうすると、本やインターネットでその病気に対するいろいろな治療法があることが分かるかもしれません。試すことのできそうな治療法や対処法を知るにつれて,自分の状況は心配したほど悪くないのかもしれないということが分かる場合もあるでしょう。楽観できる理由さえ見つかるかもしれません。


例えば、癌が発見されましたか。がんは以前は、不治の病と考えられていました。でも今では、本やネットを調べれば、さまざまな治療法や対処法があり、それによって癌を克服した人もいるということを知ることができるでしょう。


癌の治療というと、「外科療法」「化学療法」「放射線療法」の三つが、これまでもっとも一般的でしたが、今ではこれらの治療法以外にも、「免疫細胞治療」も行なわれています。また、健康食品、薬草、体にいい水、温泉、癌を治療する器械、いろいろな食事療法で癌を治した人もいます。また、がんの痛みを緩和する「緩和ケア」など、「がんと共生する」といった試みもおこなわれています。 今は、さまざまな癌の対処法、治療法があり、自分で良いと判断する治療法や対処法を選択できます。


他にも、例えば、脳の病気で主に50歳以降に発症するパーキンソン病にかかったことが分かったとしたらどうでしょうか。パーキンソン病について調べると、それは、確かに進行性の病気ですが、最近では、様々な薬剤の開発や外科的治療の普及により、それにかかった人の寿命は、日本人の他の人の平均寿命とあまり変わらず、過度に恐れる必要がなくなってきていることが分かるでしょう。


それで、本を調べたり、ネットを検索したりして、自分の病気と治療法についてできるだけ調べてみてください。難病と言われるいろいろな病気についても何らかの治療法と対処法を見出せるでしょう。


しかし,自分の病気を理性的に理解すれば,それで終わりというわけではありません。スピーゲル博士はこう説明しています。「こうした情報収集は,病気と上手に付き合い,病気を理解し,客観的に見るという重要なプロセスの一環である」。
生活は変わったけれど,人生が終わったわけではない,ということを受け入れるのは必ずしも容易ではなく,たいてい時間がかかります。しかし,こうした段階に進むこと,つまり,病気を理性的に理解したうえで感情的に受け入れることは可能です。どのようにでしょうか。


内面の落ち着きを得る

病気を受け入れることがどういう意味になるかについて,自分の見方を調整しなければならない場合もあります。いずれにしても,病気であることを受け入れるのは,自分が失敗したことのしるしではありません。船乗りにとって,嵐の中にいるという事実を受け入れることは自分が失敗したことのしるしではないのと同じです。嵐について現実的な見方をするならば、必要な行動を起こせます。


治りにくい病気を持つある女性が述べているように,自分が病気であることを受け入れるのは、「新たな方向に前進すること」を意味するのです。


また、身体的な能力が衰えたとしても,精神的,感情的,霊的な特質が必ずしもその影響を受けるわけではない,ということを思い出す必要があるかもしれません。身体的能力が損なわれたとしても、多くの場合、今でもできることがあります。例えば,今でも知性があり,物事を組織したり推論したりする能力があるのではないでしょうか。今でも温かなほほえみ,他の人への思いやり,話をよく聞き,真の友になる能力などがあることでしょう。そして,最も大切なこととして,あなたは今も,神への信仰を抱いているのです。



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この記事は、目ざめよ2001年1/22号「病気と上手に付き合う−どのように?」を参考に作成されています。またネットの情報も参考にしています。次回は、「病気と上手に付き合う(2)−生活のコントロールを取り戻す」をアップしたいと思います。「病気と上手に付き合う」は、(1)〜(5)まであります。(3)は「他の人との接触を保つ」、(4)は「前向きに生きる」(5)は「信仰から力を得る」です。




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