気分障害に取り組む(1)−うつ病

気分障害が驚くほど広く見られます。ある推定によると,世界中で3億3,000万人が重度のうつ病を患っています。うつ病が「心の風邪」と呼ばれているのも不思議ではありません。うつ病は,今後20年以内に,心血管系の病気に次いで2番目に多い病気になると考えられています。


近年,双極性障害にも注目が集まっています。双極性障害を患う人は,米国だけでも数百万人もいるということです。アメリカ医師会が最近出した本によると、双極性障害は、「うつの時期には自殺観念に悩まされ,躁の時期には的確な判断力が失われ,自分の行動のもたらす害が見えなくなることもある」。
          
                         うつ病の症状


うつ病は、精神症状と身体症状が現れる場合があります。表面に現れる症状としては、学校・部活動・会社などで、休みがちになります。また、ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなります。集中力がなくなり、運動神経や記憶力が低下し、勉強ができなくなったり、人の話を聞けなくなったりします。


うつ病になると、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどの抑うつ気分に悩まされることになります。また、何に対しても興味・喜びを失ってしまいます。以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態を経験することになります。この「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」という2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています。これら主要症状に加えて、重症になると、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「自殺念慮希死念慮」などを感じるようになります。



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抑うつ気分と興味喜びの喪失がうつ病の症状



また、うつ病の場合、身体的症状が伴う場合があります。頭が割れるような頭痛、不眠症急性胃炎慢性胃炎胃潰瘍、腰痛など全身の様々な部位の痛みなどの症状です。また、食欲不振と体重の減少、あるいは過食による体重増加が見られることがあります。「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていられない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」と訴える人もいます。


                             うつ病の性差


うつ病と診断されるのは,男性より女性のほうが2倍も多いことが知られています。 しかし,男性も5%から12%は,生涯のある時点でうつ病になると見られています。女性は産後うつ病になることがある上に,更年期のホルモンの変化に弱いという理由もあるようです。また,一般に男性より女性のほうが医師の助けを求める傾向があるので,うつ病と診断される率も高いと言えます。
            
                          季節に影響されるうつ病   


季節的情動障害(SAD)と呼ばれるうつ病を抱える人がいます。国民医療協会が出した本は,こう述べています。「SADの患者によれば,そのタイプのうつ病は,住まいが北方にあるほど,またどんよりした天気が続くほどひどくなる。SADはおもに冬の薄暗い日々と結びつけられてきたが,薄暗い室内の作業スペース,季節外れの曇った時期,視力障害などが関係する場合もある」。

                          理由のないうつ状態


うつ病の原因は何でしょうか。答えははっきりしていません。遺伝が関係しているように思える例もあります。多くの場合、生活上の種々の経験がうつ病発症のきっかけとなっているようです。


しかし、理由もなくうつ状態に苦しめられることがあります。苦しんでいる人自身も自分の状況に当惑させられていることがあります。ポーラというクリスチャンは,うつ病と診断されるまで,何もできなくなるような強い悲しみの発作に耐えていました。彼女はこう述べています。「時折,クリスチャンの集会が終わると自分の車に駆け込み,何の理由もなく泣くことがありました。ただ圧倒されるような孤独感やつらさに襲われました。気遣ってくれる友がたくさんいることはいろんな点に示されていたのですが,自分にはそれがよく見えませんでした」。


エレンも似たような経験をしました。「わたしには二人の息子と,かわいい二人の義理の娘,そして夫がいます。みんなとても愛してくれていることは感じています」と言います。理屈からすれば,エレンが良い生活を送り,家族から大切にされていることははっきりしているように思えます。ところがエレンは、うつ病で入院する必要がありました。うつ病と闘っている時には,どんなに不合理でも,暗い考えに圧倒されてしまうことがあるのです。
               
                    うつ病の原因のひとつ−脳内物質の不足


近年、うつ病は、脳の病気であって、セロトニンノルアドレナリンなどの脳内物質が不足しているとうつ病になる場合があることが知られるようになってきました。その場合、脳内に不足しているセロトニンノルアドレナリンなどの脳内物質の分泌を促進させる薬物治療を行います。この治療で、劇的にうつ病の人の状態が改善される場合があります。


時には,感情移入をして話をよく聴いてくれる人に感情を打ち明けることによってかなり救われる場合もあります。(ヨブ 10:1)しかし、脳内物質の不足が原因のうつ病の場合、単に積極的な見方をするというような方法だけでは治すのが大変難しい場合があります。実際,そのような場合,この病気による暗い気分は当人の力ではどうすることもできないことが多いのです。


最近は、気分障害のさまざまな対処法が知られるようになってきました。それで、現時点でうつ病の治癒に効果的であるとされている方法を何でも試みてみることができるでしょう。

[脚注]
この特集記事に出てくる名前は一部変えてあります。

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以上は目ざめよ2004年1月8日号「気分障害に取り組みながら生きる」に出てくる症例や意見を参考に作成されています。「気分障害に取り組む」は(1)〜(4)まであります。(1)うつ病(2) 医療の助けを得る (3) さまざまな助け (4) 他の人たちはどのように助けになれるかです。

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