自殺の問題(2)−なぜ自殺するのですか

20世紀初頭の日本の人気作家芥川竜之介は自殺をしました。自ら命を絶つ人の多くは,芥川と同様,死にたいというよりも「生じている事柄を終わらせ」たいと思うのである,と一人の心理学教授は述べました。自殺の遺書によく見られる言葉,『もうこれ以上耐えられない』とか『生きていて何になるの』といった表現は,生活の厳しい現実から逃げ出したいという強い願望の表われです。


人々はどんな理由で自殺するのですか。一般的には,人生の特定の出来事が自殺の引き金となります。


                         健康問題と経済問題


世界各国の男子年齢層別の自殺率を見ると75歳以上の高齢者の自殺率が最も高い国が大半を占めています。それで、多くの国では、高齢化するに従って自殺する危険が高くなります。


日本の警察庁が発表した2011年自殺統計によると、自殺の原因は、健康問題が47%、経済生活問題が20%、仕事上の問題が9%、男女問題が4%でした。



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健康問題は自殺の主な原因のひとつ



高齢者の自殺の動機としては健康問題が一番割合が高くなっています。経済・生活問題、家庭問題がそれに続きますが、その背景にはうつ病などの精神疾患が存在していることが多いことが知られています。加齢と共に、高血圧症、糖尿病、脳梗塞後遺症、心臓病、関節痛などの慢性的疾患をかかえることが多くなりますが、こうした継続的な身体的苦痛がうつ病の引き金となりうる危険性を持っています。必ずしも病状が末期でなくても,苦しみに耐えられないと患者が思うと,逃げ道として自殺が選択されることは少なくありません。また、家族と同居している高齢者で、同居する家族に介護の負担をかけたくないという動機で、自殺をはかる人も多いようです。


また、中高年の間では、経済上の問題や仕事上の問題が引き金になった自殺が増えています。毎日デーリー・ニューズ紙(英語)によると,自殺した中年男性の4分の3近くは,「借金,事業の失敗,貧しさ,失業などによる問題のために」そうした行動に出ました。最近、東日本大地震Iによって引き起こされた経済問題によって、自殺者が増えたと日本政府は分析しました。


家庭問題も自殺の要因になっています。フィンランドの一新聞は,「最近離婚した中年男性たち」が,自殺の危険性の高いグループの一つを構成している,と報じました。ハンガリーでの調査では,自殺を考える少女の大部分は,ひとり親家庭で育っていたことが分かりました。


                                      自殺と孤独



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 孤独は自殺やうつ病の一因



孤独は,人々のうつ病や自殺の一因となっています。フィンランドの自殺研究の第一人者ヨウコ・ロンクウィストは,「[自殺した人の]非常に多くは,孤独な日々を送っていた。自由な時間は十分にあったが,社会との接触はほとんどなかった」と述べています。浜松医科大学精神科医,大原健士郎氏は,最近の日本における中年期自殺急増の背景には「孤独」がある,と述べました。


                                性別と自殺


男女の自殺率の国際比較のデータによると、ほとんどの国で男性が女性を上回っていますが、特に、自殺率の高い旧ソ連・旧共産圏諸国では大幅に男性の自殺率が女性を上回っていることが目立っています。
 

世界の中で女性の自殺率が男性より高い唯一ともいえる国は中国です。特に中国の農村部が女性の自殺率が高くなっています。事実,ある調査によると,世界における女性の自殺の約56%は,中国で,特にその農村部で起きています。


中国での自殺の要因については、ドメスティックバイオレンス(女性)、夫の不倫(女性)、「生活や就職」などが挙げられています。そうした地域の女性が衝動的に自殺を企て,実際に命を絶つ一つの理由は,致死的な農薬が簡単に手に入ることだと言われています。


米国のある調査によると,女性が自殺を企てる可能性は男性の2ないし3倍であるのに対し,自殺を遂げる可能性は男性のほうが4倍高くなっています。男性のほうは,確実に死ねるよう,より強力で決定的な方法を取る傾向がありますが、一方、女性は、自殺するにあたって男性よりも過激な方法を取らないようです。


                               子供や若者の自殺


 日本のデータによると、青年の自殺の死因順位は、男女共に20〜24歳が第1位、25〜29歳が第1位となっています。子供の自殺の動機の約3割が、「健康問題」、約2割が「学校問題」となっています。青年の自殺の動機の約3割が、「健康問題」、約2割が「経済・生活問題」となっています。青年が就職できなかったことを苦に自殺する人が増えているとのことです。子供は、親の病気、離婚、別居、死別、虐待など家庭内の問題の影響を受けやすくなっています。


英国の最近の調査では,子どもたちはひどいいじめに遭うと,自殺を試みる可能性がほぼ7倍高くなることが分かりました。自殺願望を抱く人々と接してきた専門家の稲村博氏は,「子供は,自分の死によって自分を苦しめた相手を罰しようという内的な願望をもっています」 と書いています。


また、子供は報道の影響によって模倣や連鎖を起こしやすいという特徴があるようです。 子供は未熟な思考によって自殺に至ることが多いのです。それで、子供に自殺をして自分を傷つけた人に仕返しをしようとすることが愚かであることや、安易に他の人のまねをしないように教える必要があります。


しかし、どんな人の場合にも、引き金となるこうした事柄が自殺という反応を引き起こすわけではありません。そのようなストレスとなる状況に面しても、むしろ,大部分の人は自分の命を絶つようなことをしません。では、ある人たちが、大多数の人たちとは異なり、自殺を問題の解決策とみなすのはなぜでしょうか。次回は、「自殺の問題(3)−自殺を引き起こす根本的要因」を取り上げます。


以上はウィキペディアなどネットの情報や目ざめよ2001年10/22号を参考に再構成したものです。自殺の問題は(1)〜(7)の予定です。


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