自殺の問題(3)−自殺を引き起こす根本的要因

今まで、「自殺の問題(1)-世界的な問題」「http://d.hatena.ne.jp/littleyohane/20121223/1356221430]」をアップして来ました。今回は、自殺の背後にある根本的要因を取り上げます。


どんな人の場合にも,引き金となる事柄が自殺という反応を引き起こすわけではありません。ストレスとなる状況に面しても,大部分の人は自分の命を絶つようなことをしません。では,ある人たちが,大多数の人たちとは異なり,自殺が引き起こされる根本的要因はなんでしょうか。


                               根本的要因


「ほとんどの人の精神は,健全であれば,どんなことが生じても,それを自殺の正当な理由とするほど悲観的な見方をすることはない」と、ジョンズ・ホプキンズ大学医学校の精神科の教授,ケイ・レッドフィールド・ジャミソンは述べています。つまるところ,思いと心が病的な場合に、ある人々は自殺へと追いやる圧力に抵抗することができません。


米国立精神衛生研究所のイブ・K・モシュチツキーは,根本的なものも含め多くの要素が絡んで,自殺行為に至る,と指摘しています。そうした根本的要因には,精神障害,依存症,遺伝的素質などが含まれます。引き金となる直接的な原因だけでなく,根本的要因にも対処しなければならないのです。これらの幾つかを検討しましょう。


                               うつ病などの精神障害


これらの要素の中でも真っ先に挙げられるのは,うつ病や双極性気分障害精神分裂病,などの精神障害また依存症です。欧米での調査によると,自殺の90%以上はそうした障害と関係があります。



Expression...  by HelloImNik
うつ病などの精神障害は自殺の要因
自殺の予防に精神障害の治療が必要


事実スウェーデンの研究者たちは,その種の障害は全くないと診断された人たちの自殺率が10万人のうち8.3人であったのに対し,うつ病の人たちの場合は格段に高く,10万人のうち650人であることを発見しました。また専門家たちは,自殺につながる要因はアジア諸国でも同様であると述べています。


近年の医学の研究によると、脳の化学作用が原因になり、うつ病が引き起こされることを示しています。脳の中では,膨大な数のニューロンが電気化学的に情報の伝達を行なっています。枝分かれして広がった神経線維の末端には,シナプスと呼ばれるわずかなすき間があり,そのすき間では,神経伝達物質が化学的に情報をやり取りします。


最近の研究によると、神経伝達物質の一つセロトニンの量は,当人の,自殺に至る生物学的もろさと関係があります。「脳科学探険」(Inside the Brain) という本は,「セロトニンの分泌が少なくなると,人生の幸福の泉がカラカラに干し上がってしまい,生きる意欲を失い,うつ病や自殺のリスクが増えていく」と説明しています。


とはいえ,うつ病と,引き金になる出来事とが重なったとしても,自殺は避けられないわけではありません。近年薬物治療によって、そうした脳内の化学作用によるうつ病を治療できることが明らかになってきています。


 ジャミソン教授は,絶望感が強まって耐え切れなくなると,自殺の衝動を抑える精神機能が徐々に弱くなることを発見しました。その状況を,絶え間ない圧力によって車のブレーキが磨耗することに例えています。しかし、自らも自殺を試みたことのあるジャミソン教授は,「事態は改善されるという信念がある限り,人々はうつ病に耐えることができるようだ」と述べています。


                        アルコール・薬物依存と重複性障害


また、研究では、自殺の背後にアルコールや薬物依存の問題があることが示されています。国内外の研究では自殺者の約3分の1以上の人が直前にアルコールを摂取していたという報告があり、さらに「アルコール依存症」の人はそうでない人と比べて、自殺リスクが約6倍高いという報告があります。



alcoólicos anônimos by Imagens Evangélicas
アルコール依存は自殺リスクを押し上げる



データによると、自殺率が日本で第一位の秋田では飲酒者率が全国で最も高いのです。また、日本の各都道府県の飲酒者率と自殺死亡率との間には有意な相関があるとのことです。また、旧ソ連諸国では、アルコールが原因の自殺が多くなっています。そして、1980年代の旧ソ連でウオツカの生産が抑えられ、自殺率が減ったというデータがあります。


どうしてお酒の飲みすぎは、自殺につながるのでしょうか。お酒を飲むと、絶望感や孤独感、憂うつ感などの陰鬱な感情が増え、衝動的な行動を起こしやすくなる、視野が狭くなる(もう死ぬしかないと思い込むなど)、といった心理的変化が起こると考えられています。聖書も飲みすぎが人に不安や心配を抱かせ、人の判断力を異常にしてしまうと述べています。(箴言23:29-35)


 また、アルコール・薬物依存症者共にうつ病、不安障害との併存が多く、また、統合失調症をはじめとする他の精神障害との併存も少なくないということは、臨床現場では広く知られています。こうした他の精神障害を伴ういわゆる重複性障害のアルコール・薬物依存症者では、自殺の危険が増加することが知られています。


うつ病その他の精神障害また依存症に対処する必要があります。病院で精神障害の適切な治療を受けつつ、聖書の神から得られる助けを活用するならば、自殺に至りかねない無力感に首尾よく対処する助けが得られるでしょう。

                                遺伝的素質


遺伝的素質が多くの自殺の根本的要因ではないか,と考える人もいます。確かに遺伝子は,人の気質の決定に関与します。また,他の家系より自殺者の多い家系があることも,幾つかの研究で明らかになっています。しかし,「自殺の遺伝的素因があるということは,自殺は避けがたい,という意味では決してない」とジャミソンは述べています。


さらに次回は、「自殺の問題(4)−助けを求める」を取り上げます。


【参考資料】
「自殺のサインをみのがすな」,農山漁村文化協会発行。
ロナルド・コチュラック著,住友 進 訳,日本能率協会マネジメントセンター発行。


以上はウィキペディアなどネットの情報や目ざめよ2001年10/22号を参考に再構成したものです。自殺の問題は(1)〜(7)の予定です。


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