うつ病(16)―子供のうつ病

うつ病の子供をどのように助けることができるでしょうか。


「孤独,悲しみ,怒り」(英語)という本には,「うつ病の子どもは,少なくとも親の一方もうつ病である場合が多い」とあります。それで、うつ病になりやすい遺伝的傾向があるのかもしれません。しかし、親がうつ病である場合、子供はどのように健全な精神状態を保つかを親からは学ぶことができないでしょう。さらに、うつ病の親と共に生活することによって、同じ生活スタイルと同じ食事をするのですから、同じ抑うつ状態になる可能性も高くなるでしょう。


関係する要素はほかにもあります。例えば,学習障害を持つ子どもは特にうつ病になりやすいようです。それは,クラスメートについていけないと分かると自尊心が弱まりやすいためかもしれません。


米国立精神衛生研究所のドナルド・マクニュー博士は子供のうつ病の問題を20年間研究してきました。博士によると、1,000人の子供を対象にした最近のニュージーランドの研究で9歳になるまでに早くも抑うつ症状を経験した子供は全体のおよそ10%であるということが分かったということです。学校に通う子供の10%ないし15%は情緒障害を抱えているように思われます。数はそれよりも少ないですが,重度のうつ病にかかっている子供もいます。



Free A Child's Cry for Peace Creative Commons by Pink Sherbet Photography (childdepression)
幼い子供の一割かそれ以上がうつ状態なのかもしれません


では、うつ病の子供をどのように助けることができるのでしょうか。次に子供のうつ病の症状と対策について博士が述べていることを示します。


                         うつ病の子供の症状


・何事にも全く喜びを感じない。外へ出て遊びたいとも,友達と一緒にいたいとも思わない。家族に対しても関心を示しません。
・集中力がない。宿題だけでなくテレビ番組にさえ熱中できない。
・無力感や個人的な罪の意識が見られる。自分はちっとも良い子ではないし,だれからも好かれてはいないんだ,と言うかもしれない。
・眠れないか,眠りすぎるか,また食欲がなくなるか,食べすぎるかのどちらかかもしれない。
・「自分なんか生きていなければいいんだ」といった,自暴自棄な考えを口にするかもしれない。


                         子供のうつ病の引き金


・主要なものは恐らく死別。これは普通,親との死別だが,友達や親しくしていた親戚の人,あるいはペットの死も含まれる。
・家庭や学校で見くびられることやのけ者にされること。自分の親にけなされ,くだらない取るに足りない存在だと思わせられること。子供に落ち度があってもなくても,家族内にうまくゆかない事があると,子供のせいにされること。そのため子供は,自分はいないほうがいいという気持ちになる。
・親の情緒障害


                 子供のうつ病に伴うことのある問題行動


うつ病の子供の中には麻薬やアルコール飲料を乱用する子や,非行にさえ走る子もいる。子供は多くの場合、車を盗んでみたり,麻酔剤やアルコール飲料を飲んでみたりして,他の事柄に忙しくしていることによってうつ病に対処しようとする。そのようにして自分の気分が悪いことを隠す。うつ病であることを隠そうとするのは,子供が大人と特にはっきり異なっている点の一つである。
・非行に走る子供と話し合い,子供が心にある事柄を話してくれれば,うつ病であることが分かる場合が少なくない。うつ病が適切に治療されるなら,子供の振る舞いは良くなる場合がある。


                親はうつ病の子供をどのように助けることができるか


・子供に質問して自分の気持ちを吐露する機会を与えることが必要。
・死別が生じた時には,子供の悲しい気持ちを過小評価するのではなく、その悲しみを言い表す機会を与えることが必要。
うつ病の子供には特別の注意やほめ言葉,また感情的な支えが必要。その子だけと一緒に余分に時間を過ごしてください。親の払う温かい関心こそ最善の治療法。



Mother and Children by joseloya (motherandchild2)
うつ病の子供には余分の時間を過ごして特別の注意やほめ言葉が必要です


・そのうつ病が体を衰弱させるほどなら,肺炎と同様,専門家に診てもらう必要があるかもしれない。専門家の薬物治療や,子供の考え方を調整することにより、うつ病をかなり治療することができる場合もあります。


                   子供のうつ病に真剣に取り組む必要


・子供のうつ病に早期に対処する必要性
 英国の児童・思春期専門の精神科病院であるモーズレイ病院で、「うつ病」で入院した患者を対象に、20年にもわたる追跡調査を行った研究があります。この研究の結果、なんと6〜7割の子どもたちが、その後大人になってからも抑うつ的であり、対人関係適応・社会適応も悪い状態を続けていたということが分かりました。
 子どもの頃に「うつ病」に「行為障害」(非行やその他の問題行動を慢性的に繰り返してしまう問題)を合併している場合は、大人になってからの予後がさらに悪く、自殺既遂・自殺未遂が圧倒的に多く、犯罪歴が多く、アルコールや薬物に依存しがちであり、いろいろな点で社会適応が極端に悪くなりがちであることも示されました。できる限り問題が大きくならないうちに、子供のうつ病に対処する必要があります。
・子供のうつ病に真剣に取り組むことによる効果
 子どもの「うつ病」に対して抗うつ薬を使って通院治療をした場合、効果があるという統計もあります。
 ある調査によると、投薬をするかどうかは、自殺の発生率に、さほど、大きな違いが出てくるわけではありません。しかし、通院治療をすることによって、自殺企図率が顕著に減少しています。
 結局、子ども自殺を防ぎ、「うつ病」を治療していくうえで、本当に大切だったのは、投薬というよりも、家族や周囲の大人がちゃんとそこにある問題を重大な問題だと認識し、子どもを通院治療させ、自分たちも問題に向き合い、一所懸命に取り組んでいくことだったのでしょう。


[関連する記事}
うつ病(17)−十代のうつ病の原因と対策
うつ病(1)−軽い鬱病と重い鬱病
離婚その悲惨な結果(4)−子供に対する悪影響
自殺の問題(1)−世界的な問題

[アメブロの最近の更新]
ダニエル11章・現代の北の王と南の王に関する預言