出エジプト34章・エホバは聖柱と聖木の崇拝に反対される

「アモリ人,カナン人ヒッタイト人,ペリジ人,ヒビ人,エブス人をあなたの前から追い立てる。・・・あなた方は彼らの祭壇を取り壊し,聖柱をみじんに砕き,聖木を切り倒すように。」(出エジプト34:11,13)


 聖柱や聖木はイスラエル人が約束の地に行った時に、アモリ人やカナン人によりすでに崇拝されていました。エホバ神はイスラエル人にそれらを徹底的に破壊するようにと命じられました。聖柱や聖木の崇拝はどのようなものだったのでしょうか。


 聖柱とは何ですか。モーセの律法の中に「自分のために彫刻像や聖柱を立ててはならない。見せる物としての石をあなた方の土地に置いて,それに向かって身をかがめてもならない」という規定がありました。(レビ26:1)ですから、聖柱は石でできていて崇拝の対象とされたものでした。
列王第二3章2節によると、アハブ王が「バアルの聖柱」を造ったと述べられています。それで、バアル神を表わす聖柱があったことが分かります。聖柱とはバアルもしくは他の神々の陰茎像であったと考えられています。


 列王第二10章26節によると、「バアルの家」があってそこにバアルの聖柱が安置されることもあったことが分かります。中東の様々な場所で直立した石柱が宗教的な人工物と共に見つかっています。そのあるものは切り石でない石で,高さは1.8メートルかそれ以上あります。


 聖木とは何ですか。モーセの律法の規定に「自分の聖木としての木をいっさい植えてはならない」とあります。(申命記16:21)それで、聖木とは自然の木であり、今日で言えば、神木のようなもので崇拝の対象とされたものでした。聖柱が男性の本質を表わすのに対して,聖木は女性の本質を表わしていたのではないかと言われてきました。


 申命記16章21節から、「聖木」とは「アシェラ」であることが分かります。アシェラとは、カナン人の多産の女神です。ラス・シャムラ文書によると、アシェラは「生き物の創造者」エル神の妻であるとされており、「神々の先祖」と呼ばれています。アシェラはバアル崇拝の3人の著名な女神のひとりです。アシェラはバアルの母でもあります。また、バアルの妻とみなされていた可能性もあります。


 聖句の中で、聖柱の崇拝と、聖木の崇拝が並べられていることが多いので、聖柱、聖木崇拝は同時に行なわれることが多かったことが分かります。不忠実なイスラエル人は「すべての高い丘の上や,すべての生い茂った木の下に,高き所や聖柱や聖木を建て続けた」と記録されています。(列王第一14:23)ですから、聖柱や聖木は普通、高い丘の上や生い茂った木の下に建てられていたことが分かります。マナセ王はエホバの家の中に、自分の造った聖木の彫刻像を置きました。(列王第二21:7)それで、聖木を用いて彫刻像が作られることもありました。


 エホバの崇拝が衰退した時に、エホバの神殿に「バアルや聖木」やそのために造られた器具が置かれていたこともありました。(列王第二23:4)列王第二23章7節に、「女たちが聖木のための天幕の社を織っていた」と述べられています。おそらく、聖木を覆う布製の天幕の社があったのでしょう。


 聖柱や聖木の偶像崇拝は、性の崇拝と結び付けられていました。聖柱や聖木の崇拝の行なわれたレハベアムの治世のころ、神殿男娼がいたという言及があります。(列王第一14:23,24)それで、聖木や聖柱の崇拝は、はなはだしく堕落した不道徳、宗教と関係した同性愛の売春と結び付いていました。また神殿男娼の慣行は、ユダの王マナセやその子アモンの時にも聖木や聖柱の崇拝とともに行なわれていたようです。(列王第二23:7)


 イスラエルのアハブ王の時代にアハブ王の妻であるイゼベルは,バアルの預言者と,四百人の聖木の預言者を養っていました。(列王第一18:19)そのイゼベルは淫行と心霊術で有名でした。(列王第二9:22)さらに、イゼベルはエホバの預言者を迫害して殺しました。(列王第二18:4)それで、聖木の崇拝は、エホバの忠実な崇拝者を迫害して殺すこととも関係していました。


 アサやヒゼキヤ、ヨシヤのような忠実なユダの王たちは、聖柱や聖木を打ち壊しました。(列王第二 18:4; 23:14; 歴代第二 14:3)エヒウが十部族王国からバアル崇拝を根絶した時にはバアルの聖柱が取り壊されました。(列王第二 10:27,28)


 それで、聖柱と聖木の崇拝は、偶像崇拝であり、堕落した性の不道徳と結びついていました。それは、一種の性の崇拝でした。それはまたエホバの崇拝者の流血とも関係していました。それで、エホバは聖柱と聖木の崇拝に徹底的に反対されました。